海の音は不思議なくらいに心を落ち着かせるなぁと思う。
ザザーン、ザザーン、心地よい音が耳に響いて、優しい潮の香りが鼻孔を満たした。
皆で汗だくになりながら潮干狩りをして、今は何もすることがなく自由時間。
ラムネを片手にボーッと海を眺めている。
エメラルドグリーンの硝子瓶越しに、雄大な海を見つめる。
そこだけを切り取ったような、エメラルドグリーンの世界、炭酸の泡が上へ上へと上がっていって、なんとも、幻想的。
とは言っても、実質向こうの世界をハッキリと視界に写せてはいないのだけれど。


「何か見えますかー?」

「なぁんにも見えませんよー」


隣でラムネを飲んでた亮くんが問いかけてきたので、素直に見たまんまを答える。
じゃあなんで見てるの? って聞かれたから、なんとなくだよ、と答えた。
変なの、そう言ってクスクス笑ってまたラムネを一口。
私も一緒にラムネを飲んだ。
口の中で炭酸がシュワシュワと弾けて、それが喉に流れてちょっと痛かった。
炭酸の痛みはすぐになくなって、ラムネ独特の甘味が口に広がる。
甘い、美味しい。


「亮くん、」

「何?」

「淳くんは元気そう?」

「この前電話で話したけど、相変わらずだった」

「そっか……私も淳くんと話したいなぁ」


あっちが掛けてくるの夜だから無理じゃない? また亮くんがクスクスと笑う。
淳くんもそうだったけど、ほんと木更津ツインズは二人揃って同じ笑い方をするなぁ…なんて思うだけで口にはしない。
昔からそうだからべつに今更だし。
グビッ、最後の一口を飲みきる。
中のビー玉が飲み口を塞いだ。
それを舌で押せば、カランと音がしてビー玉が落ちる。
飲み口の蓋を捻って開ける。
小さい頃は取り出すのに苦労したもんだが、今は随分と簡単にビー玉が取れるようになったなぁとしみじみ思う。
ザザーン、ザザーン、海の音が絶えず耳に響き渡る。
優しい音、心地よい音。


「それにしても、今日も熱いねー…」


燦々と照り付ける太陽を見上げながら一言。
あまりの眩しさに手を翳す。
じりじりと痛いくらいの光線を浴びながら、もっと日焼け止め塗ればよかったと後悔する。
でもきっと日焼け止めを何重に塗っても無駄なんだろうなとも思った。
亮くん髪の毛結ばしてよ、と言ってみると、女の子みたいな髪型にするからヤダ、って断られた。
すでに女の子みたいな髪じゃないかと言おうとして黙った。
少し離れた所から剣太郎の声がした、かき氷できたよー! と、元気な声。


「亮くん、かき氷だって」

「ん、」


空になった瓶を片手に二人で剣太郎達の元へ向かう。
もう一度エメラルドグリーンの世界を覗き込む。
瓶越しの世界はやはりボヤけた世界だったが、心地よい波の音に耳を傾ければ、それはそれで綺麗な世界だった。


「何か見えますかー?」

「なぁんにも見えませんよー」


さっきと同じ会話を繰り返して、今度は二人でクスクスと笑った。
私ひょっとして、亮くんの笑い方がうつったかな? なんて思って、そんなわけないかと一人で自己完結。
なんだか可笑しくなった。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -