その6、首藤くんと
ビーチバレー
ほどよく腹が満たされたというのに、今度は皆でビーチバレーをしようなんて事になった。
ご飯やスイカを食べた後だというのに、皆とにかく元気で、ほんとに疲れ知らずだなぁと思う。
二人一組のチーム戦、樹っちゃんとサエさん、ダビデと剣太郎、バネさんと亮くん、そして私と聡くんといった組み合わせだ。
今はサエさん樹っちゃんペアと、バネさん亮くんペアの試合中。
コートの外側で聡くんと座って試合を見ている。
「よくよく考えてみたら私聡くんとペアになったの初めてだね」
「っていうかビーチバレー自体そんなにやってないじゃん。……この前の合同合宿の時なんて俺意識なかったし」
「あー…」
聡くんの言葉に納得してしまうのがなんとも悲しい話。
この前、青学テニス部と合同合宿をした際に皆でビーチバレーをしたけれど、あの時聡くんは罰ゲームのドリンク『イワシ水』をあろうことか先に飲んでしまい、倒れてしまったのだ。
その為にやむを得ず棄権になったのである。
あれ以来少しは変わったドリンクに挑戦しなくなったかなと思いきや、そんな事はなく相も変わらず変わったドリンクを買っては飲んでいる。
何て言うか、ちょっとは懲りてくれといった気持ち。
「聡くんビーチバレー強い?」
「弱くはないけど強くもない」
「……微妙な答えだね」
「っていうかテニス部だし」
「そうでした」
ビーチバレーとかビーチフラッグとかやっていると、なんだか自分達がテニス部っていう事実を忘れかけてしまう。
ビーチバレーやビーチフラッグは楽しいし、たまには息抜きとしてやるのはいいとは思うのだけれども。
まぁ、うちの部らしいと言えば、らしいのだが。
「最近なんか変わったドリンク飲んだ?」
「10本くらい飲んだ」
「すごいね…」
「いつかイワシ水にリベンジしようと思ってるからさ」
「……やめといた方がいいんじゃない?」
大丈夫大丈夫、次は余裕! と、私の言葉は見事にスルーされた。
飲んだことはないけれど、乾くん特製の乾汁なるものにはあまり関わりたくないと思う。
やがてサエさん達の試合が終わった。
結果はバネさん亮くんペアの勝利。
次に私と聡くんペア、ダビデ剣太郎ペアの試合だったが、早々に負けてしまった。
うん、まぁ、こんなもんだよね。
ついでに、優勝したのはダビデ剣太郎ペア。
後輩が強くなったと喜ぶべきが、後輩に負けたと悔しがるべきか、複雑な心境の先輩達である。