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学校の帰り道で、怪我をしている白いこいつを拾った。

その日は朝から雨が降っていて、寒さに震えながら鳴いているのを
見捨ててなんておけなくて持っていたタオルで身体をくるむと家路を急ぐ。
こいつを見ると、母さんは驚いたけど一緒に動物病院に連れて行ってくれた。


「自分で責任を持てないのに、一時の感情で拾って来るんじゃない」


だけど、話を聞いた父さんは俺とこいつを交互に見ると眉間に皺を寄せそう言う。
返して来いと続ける父さんに我慢できず怒鳴った俺はこいつを抱え家を飛び出した。

何で、そんなこと言うんだよ
だって、こんなに小さいのに独りぼっちで
怪我までしてて、それなのに…それなのに、

雨は上がり星空が広がっている下走って着いたのはこいつと出会った公園だった。
滑り台下の空洞に入り腰を下ろして、どれくらい時間が経っただろう。

時間が経ったことで気持ちは落ち着き、腕の中から顔を出すこいつを撫でながら
冷えた頭で父さんの言ったことを考えると、どうしようも無いことに気付く。

まだまだ子供の俺は力も無く、家で飼えるかどうかも分からないというのに
安易な同情で拾えば拾われたこいつを傷付ける結果になるかもしれない、ということにだ。


「…ごめんな」


そんなこと、よく考えれば分かるのにな。父さんの言ったことは決して間違っていなかったんだ。
そっと頭を撫でてやるとこいつはにゃあ、と小さく鳴いた。ほんの少し、泣いてしまった。

そうしていると、公園の入り口の方から足音と名前を呼ぶ声が聞こえ慌てて目元を拭う。


「こんなとこにいたの?」


真帆は空洞に居る俺を見つけると、ほっとしたような笑みを浮かべた。
お前何してんの。夜に1人で外出歩くなんて危ないだろって言ってやりたかったけど
それは俺にも言えることだから言える訳も無く、黙ったまま視線を外す。


「しんぱい、したんだからね」

「………ほんとかよ」

「千尋のおかあさんも、おとうさんもしてたよ」

「で、も…こいつが……」

「だいじょうぶ」


何が大丈夫なのかは分からないけど真帆が自信あり気にそう言うから
一緒に帰ろう、と差し出された温かな手を取り立ち上がったんだ。


>>小さな光


…え?その後こいつはどうなったかって?それがさ、聞いてくれる?
まさかの芽衣家の一員になっちゃったんだよ。びっくりでしょ?
名前は芽衣が付けたんだけど…白いからって「しろちゃん」だそうだ。
まんまじゃねーか、って俺は笑ったけどこいつは嬉しそうに喉を鳴らしていた。


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