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「真帆に逢いたい」


筆記音と紙が擦れる音のみが聞こえる静かな部屋の中
千尋はそう呟くと机に広がる書類はお構いなしで突っ伏した。


「元気でやってんのかなぁ…変な奴に言い寄られて…は無いか。あいつ居るし」

「………」

「逢いたいー声が聞きたいー触りたいぃいー」

「……………」


それまで黙殺していた跡部の眉間がひくりと動き、持っていたペンを強く握り締める。
部屋に居た残りのメンバーは固唾を飲み込みじっとその様子を見守っている。


「…あーもう駄目だ駄目だ。休憩しよ」

「まだ始めて10分も経ってねーのに何が休憩だ、アーン?」

「は…?そんな馬鹿な!俺の体内時計ではもう2時間ぐらい経ってるんだけど!?」

「ほう?修理が必要みてーだなポンコツ」

「何だt「ねーねー、前から思ってたんだけどさー」ジロー起きたの?」


だらり、と身体をソファに投げ出し惰眠を貪っていた芥川が起き上がり欠伸をした。


「真帆ってどんな子なのー?」

「え、ジロー気になっちゃう系?でも教えない!惚れられたら嫌だし!?」

「逢ったこと無いのに惚れないしー」

「おいジロー、起きたんなら帰れ。仕事の邪魔だ」

「えー?だって跡部も気になるでしょー?」


度々出てくる名前なだけに全く気にならない訳では無いが、今はそれどころでは無いのだ。
仕方無いと言いつつ嬉しそうな千尋に跡部は机に肘をついた方の手で額を覆い息を吐いた。


「家が近所の…所謂幼馴染ってやつなんだけど、ちっちゃくって可愛くって」

「へー?」

「どんな顔してても可愛くてーちょっとドジな所とかもう最高に可愛くってさー!」

「(可愛いばっかり言ってるし…)」

「意外と頑固で意地っ張りで、どうしようも無いくらいお人好しだけど」

「……………」

「そんな所も引っ括めてぜーんぶ、好き」


照れくさそうに指で頬を掻く、見たことの無いその姿に思わず笑みを浮かべた。


>>想い馳せる


「…で?その真帆とやらはお前のこの体たらくを見てどう思うだろうなぁ?」

「千尋ってば自分に与えられた仕事もできないの?まじありえなぁーい!…って言うと思うしー」

「ちょ、真帆はそんなこと言わないしぃい!?馬鹿言ってんじゃないよっ!!」


…そう言い返しておきながら慌てて書類の束を引っ掴みペンを走らせ始めた千尋に
芥川は小さく噴き出し、跡部は芥川に礼として菓子を与えるよう樺地に言うのであった。



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