日進月歩 | ナノ
疑心(1/5)

「どうにかならないですかね?」

「なりませんね」

「ほら、もう全然大丈夫でっ…痛くないですよ?本当に」

「…無理に動かさないように。それに、榊が許さないと思うよ」


榊と柚季達が案内された部屋に入ると、中には苦笑する医師と看護婦
そして、リクライニングベッドにもたれるように座っている絢が居た。


「っ絢ーーー!!」

「柚季ごめんねー?授業サボらせちゃって」

「そんなことより!大丈夫なの!?怪我は!?」

「……西園寺、どうだった」


榊に西園寺、と呼ばれた医師は全身打撲だね、と簡潔に診断結果を述べた。
柚季は絢の左手をそっと握り、跡部や幸村達は大袈裟に息を吐く。


「転び方が良かったのか骨は折れていないようだけど、念の為に精密検査を
 受けることを勧めるよ。そちらさえ良ければ2、3日程入院して貰いたい」

「…分かった。宜しく頼む」


そう言い入院の手続きをする為部屋を出て行く医師と榊の後ろ姿を見送ると
また後で来ますね、と言い後を追うようにして看護婦も部屋を出て行った。


「…随分と派手に落ちやがったみてーだな?アーン?」

「うち、転び方が上手いって褒められた?いぇーい」

「この馬鹿!」


額に青筋を立てて怒っている跡部にあっけらかんとそんなことを
言って喜ぶ絢の頭を、いつもの如く叩こうとした跡部の腕を幸村が掴む。


「駄目だよ跡部。頭も打撲してるかもしれないでしょ?可哀相に…」

「そうじゃ。元から酷い頭が更に酷くなっとるかもしれんというのに…」

「心にぐさぐさ突き刺さる!頭より心が打撲しそうなんだけど!!」

「自業自得だろぃ。ったく、お前何で階段k…」


そこまで言った丸井が何やら焦った表情をしていることに気付き
その視線を辿ると…柚季が肩を震わせぽろぽろ、と涙を零していた。


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