日進月歩 | ナノ
急転(1/5)
空腹と戦いながらどうにかこうにかペンを走らせ、待ちに待った
4限目終了のチャイムの音と同時に机に突っ伏し息を吐いた。
「だあああー…まじ無理。腹減り過ぎて死にそう」
「……お昼だあああー」
げっそり、という言葉がこの上なくしっくりくる表情をする2人に
果たして先程の授業の内容は頭に入っているのだろうか…と仁王は苦笑する。
「なぁ、5限目何」
「いい加減時間割覚えろって…体育」
「………げぇ」
「今日はサボらせねーぞ。サッカーチーム戦絶対勝つ」
仁王と丸井の会話を聞きながら、昼食の後そのまま更衣室へ行けるように
体操着を持って行こうと机の横に引っ掛けた手提げ鞄を手に取る。
「(気温も高いし、もうそろそろ半袖にしよっかな)」
今日はどちらでも大丈夫なよう両方持って来た為重みのある手提げ鞄を探るが
どれだけ掻き分けてみても中にはジャージ上下しか入っていなかった。
「(………今度は体操着だったよ絢ー…!)」
…最初は上履きに始まり、それで終わる訳が無く次から次へと
周りに気付かれないようじわじわと侵食するように物が姿を消していた。
「(あちゃー…2限目移動教室だったもんなぁ)」
最近はなるべく物を置いたままにせず持ち帰るようにしていたが
さすがに、移動教室に荷物を持っていくことまでは考えもしなかったのだ。
いつになれば、このままずっと耐えていれば、終わる日が来るのだろうか。
黙っているから続くのだろうか?しかし、下手にこちらが動きを見せれば
逆に激しさを増してしまうかもしれない…答えは、まだ出ない。
「柚季何ボーっとしてんだよ?置いてくぞ?」
「…っあ、待って待って!!」
「ははは、捕まえてごらんなさーい」
「棒読みだし何よりキモいから」
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