日進月歩 | ナノ
視線(1/5)
「まさかの展開だったよね!柚季、久しぶりにドラマ見て泣いたしー!!」
「ヤスコやばすぎ!あんな女にうちもなりたいわー」
朝から熱く、昨日のドラマについて語り合いながら登校してきた2人。
すっかり場所を覚えた下駄箱を開けると…あるはずの物が見当たらない。
「……絢ー」
「んー?どうしたー?」
「ど、どうやら柚季の上履きは神隠しに遭ったようだ…!」
「まじか!…じゃあ、うちの上履きも柚季の上履きを追いかけてったんだな…」
「絢のも?…一緒なら何処へ行っても怖くないよね」
「当たり前!うちらは上履きの幸せを祈ろうじゃないか」
「おっけーぃ!!」
そっと下駄箱を閉めた2人は笑い、それぞれ手を合わせ祈り始める。
「何あいつら、馬鹿じゃないの?」
「普通気付くっしょ?まじありえないんですけど」
「だからもっと他のにしようって言ったじゃん」
「ま、次があるって。行こ」
そんな2人を何処からか見つめ小声で話していたいくつかの影は
やがてぱたぱた、と小さな音をたてその場を去って行った。
「………さて、馬鹿はどっちだろうね?」
「全く…人の物を盗むなんてけしからんな!」
「とりあえず、タロに履く物貰いに行こー」
………にやり、と笑っていた2人に気付くことなく
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