2012バレンタイン(セバス)(9/28)
(※ちびっ子連載設定)
「随分苦悩されていましたね」
ボールと泡だて器を片手に思い出すのは小さな主人の姿。
ついさっき廊下ですれ違ったのだが、その理由を彼はすぐに悟った。
「エリザベス様への手配はありましたが・・・+++への手配は何もありませんでしたからね」
まさか婚約者の存在を差し置いて、主人が彼女へのプレゼントを全て自力で用意するとも思えない。
となれば純粋に用意していない、もしくは用意できていないと考えるのが妥当だろう。
「自身で出来ることの選択肢が少ないと苦労しますね」
言いながらも泡だて器を動かす手は休めない。
ボールの中では着々と卵白がメレンゲへと姿を変えつつあった。
「・・・さて」
出来上がったメレンゲを2つに分けて、それぞれ予め作っておいた生地とあわせる。
片方はプレーンで、もう片方にはココアを混ぜた生地。
型に流し込む時に軽く混ぜれば、生地は綺麗なマーブルを描く。
そのままオーブンに入れて、火の調子を見ながら焼き上がりを待つこと数十分。
「こんな感じですか?」
取り出し、冷まして、型から抜けば出来上がったのはシフォンケーキ。
ホイップクリームを添えて皿に飾り付ければ完成。
「では行きましょうか」
ティーセットと共に2つの皿がワゴンに乗る。
同じ様に盛り付けられたケーキはよく見れば大きさが違う。
仕事を完璧にこなす彼が切り分ける際に間違ったということでは無く。
・・・つまりはそう言う事だった。
執事の優越感
(「お茶の用意が出来ましたよ」「わーい!」「・・・おいセバスチャン、僕の方が小さくないか?」「プレゼント、ですからね」「なっ、セバスチャン・・・!」「2人ともどうしたの?」)
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こっそりシエルの場合と連動
掲載期間
2012.02.14〜03.01
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