ちびっ子とお正月(現パロ)
(5/28)

「・・・起きてるか?」

『ぬ、ぅ・・・』

「・・・シエル?寝てるなら、お部屋に連れていった方が・・・」

『リジー、・・・起きてる』

「あ、あら、そう?」


年末に新調したソファに横になり、うとうとする+++を心配するリジーは視線で「本当に良いの?」と訴えてくる。
その訴えに僕は答えの代わりに時計を見た。

「・・・後10分か」

紅白も終わり、テレビは静かに各地の年越しの様子を写している。
何を思ったのか冬の寒さに異常に弱く、かつ冬場のみ睡眠を異常に欲する+++が「起きたまま年を越したい」と言い始めたのは昨晩の話。
起きていられるようにと昼寝もして準備万端だったはずが、遊びに来たリジーとはしゃぎすぎて体力を使い果たしてしまったらしく、紅白中盤からウトウトし始めていた。
寝ろと言ってみたが、彼女も冬場の寝起きの悪さを自覚しているためか、それは頑なに拒否し続けて今に至る。

「・・・何かお飲物でも用意した方がよろしいでしょうか?」

「いや、用意している間に寝る可能性もある」

+++には甘いセバスチャンが毛布を片手に策を提案する。
・・・というか待て、毛布とか寝かせる気満々じゃないのか?

「違いますよ、坊ちゃん。お風邪を召されたら大変ですからね」

「あら、そうよね。ココでウトウトしてたら風邪引いちゃうわ!・・・ほら、やっぱり起きて!後3分よ!」

『ん、ぅ・・・』

不機嫌そうに身を捩る+++。
・・・まずい、非常にまずい。主に機嫌が。
あれは半分以上眠りに落ち始めた証拠だ。

「もー、起きて!起きて年越しするんでしょー!」

「エリザベス様、ちょっと失礼」

「セバスチャン?」

「―――、――?」

『っ!?』

「「!?」」

突如体を起こした彼女の目は先までとは違い、大きく見開かれていた。
キョロキョロと辺りを見渡していたが、何かを確認すると安心したように一つため息を吐いた。

『良かっ・・・、・・・シエル?どうしたの?』

「い、いや・・・何も・・・」

セバスチャンの囁いた言葉に疑問を持つにも、時計を見れば後数十秒だった。
テレビもいつの間にかどこかの鐘のシーンに変わっていた。

―10、9、8、7・・・

テレビから音が消えて、時計の秒針の音だけが響く。

―6、5、4・・・

いそいそと居住まいを正し始めるリジーたち。

―3、2、1・・・

パチンとセバスチャンが懐中時計の蓋を閉じる音がして、テレビは盛大に年明けの鐘の音を伝えた。

「新年明けましておめでとうー!」

「あぁ、おめでとう」

「おめでとうございます」

『今年も、よろしくねー』

満面の笑みで年明けの挨拶をする+++、ところが次の瞬間その体はポスンとソファに沈み込んでしまった。

「な、おい!!」

「えぇぇ、だだだ大丈夫!?」

「・・・二人ともご安心を。・・・眠っていらっしゃるだけですから」

困ったようなセバスチャンの顔にリジーと二人で顔を見合わせる。

「・・・ねぇ、シエル?さっきのは・・・起きていたのかしら?」

「・・・さぁな。目が覚めた本人に・・・聞くしかないだろうな」


・・・できたら覚えていてほしい。切実に。




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元が英国なだけに「紅白」が違和感(笑)

掲載期間
2012.01.02〜01.17




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