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土地神様とお正月
(3/28)


「あ」

「お?」

不意に空を見上げた彼女につられて、顔を上げれば聞こえてくるのは鐘の音。

「・・・鐘の音如きで煩悩落とそうって面白いこと考えるわね。しかも108個。落とせると思ってるのかしら?」

「そう言うでない。人も人なりに考えておる」

「ふぅん・・・」

少し窘めれば、彼女は暖をとっていた火鉢から離れ、ふわりと重さを感じさせない動きで雪の積もった庭の上に舞い降りた。

「でもね、人じゃない私が言うのもアレだけど、落とされると困るのが1個だけあるのよね」

「なんじゃ、+++にもそのようなものがあるのか?」

「そうよー、大事な大事な煩悩がね」

はて?一体なんだろうか?
そうワシが首を捻って考えていく間に+++は真夜中だというのに、雪の積もった庭を縦横無尽に動き回っていた。

「・・・やだ、信玄分からないの?」

「・・・うむ」

直後、ぺしゃりと冷たい何かが顔に投げつけられる。
それが雪玉だと判断するのに時間は掛からない。
そして投げた主をみれば、呆然としたような表情を浮かべていた。

「な、何で受けてるのよ!避けてよ!」

「む、すまぬ・・・」

「ちょ、ちょっと!謝らないでよ」

焦ったように庭から上がってくる+++。
ワシの顔をのぞき込もうと近寄った瞬間、油断しきっていたその細い腕をつかみ、自分の胸の中へと引き寄せた。

「な、ちょ、っと!」

「すまぬ。本当は何となくだが、推測は出来ておった」

「・・・言ってみてよ」

「ワシに、天下を取ってほしい。・・・そう願う気持ちではないか?」

「何よ・・・分かってんじゃないの」

「ハハハ。少し、からかってみたくなったと言えばどうする?」

「なっ・・・!」

案の定、絶句して黙ってしまった+++。
ココで腕の力を弱めれば、逃げられてしまうのは分かっているから、あえてそのまま話しかける。

「ワシは幸せ者じゃ。+++と一緒に年を越し、さらには+++がワシの事を考えてくれているのだからの」

「・・・・・・の」

「ぬ?」

「新年早々馬鹿じゃないの・・・!聞いてるこっちが恥ずかしいわ!」

「しかしこうでも言わねば、伝わるまい」

「ーーっ!!年神が来るから、私っ!」

続きを言うよりも先に腕の中から+++が消えた。
姿が見えない辺り、彼女の言う土地神の力とやらを使ったのかもしれない。

「・・・愛らしいの」

誤魔化すか、隠そうとしていたのかもしれないが、ほんの僅かな月の光の下でも分かるほど、+++の頬と耳は真っ赤に染まっていた。
それこそ今、火鉢でじんわりと暖を生み出している赤色と同じぐらいには。

・・・戻ってきたら悪ふざけが過ぎたと詫びて、茶菓子でも用意してやろう。

そう思いながら、消えた温もりを補うために火鉢にあたり直した。



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お館様難しい!

掲載期間
2012.01.02〜01.17




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