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『・・・あ、れ。セバスチャン、さん・・・?』

2,3回瞬きしたかと思えば、焦点の定まった瞳で名無しが首を傾げる。
これに脱力したのは勿論セバスチャンだ。もしかしなくても、まさかのまさかではなかろうか。

「・・・おはようございます。名無し。何があったか覚えていらっしゃいますか?」
『へ?え、と・・・?あれ、そういえば毛布・・・』
「・・・」

きっと間違いない。認めたくないがきっとそうだ。
認めたくないが確認するために、セバスチャンは1つ問いかけた。

「名無し。お聞きしますが、貴女今まで冬の朝はどうしていましたか?」
『冬?えーっと・・・お父さんが、冬は寒くて起きれないだろうから、自分から目が覚めるまで好きなだけ寝てなさい。誰も邪魔はしないよって。だから冬場はお仕事もなくて、えと・・・セバスチャンさん?』

嗚呼、決まりだ。間違いない。
名無しは寝ぼけていたのだろう、攻撃は起こされたことに対する自衛機能に違いない。
可愛い顔してなんとやら、目の前の彼女はとんでもない爆弾を抱え込んでいたらしい。
そして主人の命とは言え、それを爆発させに行った自分。
なんだかとてもやるせなさを感じてしまう。

「大丈夫ですよ。さてどうしましょうか?またお休みになられますか?それともお食事にしますか?」
『うーん、と・・・なんだかお腹が空いてるから、ご飯がいいです』
「畏まりました。ではお着替えが終わりましたら、降りてきてくださいね」
『はいっ』

ニッコリと笑う名無しに一礼をしてセバスチャンは部屋を出た。

「・・・坊ちゃんと違い、手のかからない子だと思っていたのですが・・・」

冬場だけは恐らく屋敷一の問題児に違いない。
遅い名無しの朝食の準備がてら、セバスチャンはシエルの元に急いだ。

「・・・冗談はよせ、といいたいが事実なんだろうな。セバスチャン、お前所々着衣が乱れてるぞ。僕も毎朝乱闘騒ぎを起こされては困るからな、良いだろう。名無しの好きにさせたら良い」

セバスチャンの報告にシエルは少し考え込むとそう決断を下した。





*************



「・・・で、これは起こしてやるべきか?」
「・・・坊ちゃんが起こして差し上げればいいじゃないですか」
「・・・馬鹿言うな。僕は自ら爆弾に手を出す真似はしたくないぞ」
「・・・生憎ですが、それは私も同じです」

ひそひそと小声で交わされる会話。
2人の視線の先には暖炉に一番近いソファで文字通り丸くなって眠っている名無し。
書庫から本を持ち出して読みふけっていたが、いつの間にか眠気が襲ってきたらしい。
それでも読みかけの本は何とか机の上に置いたらしく、片腕がだらりと垂れ下がっていた。

「・・・夕方でそろそろ冷えてきたしな」
「・・・えぇ。今日の朝のように目覚めが良い可能性は低いですね」
「・・・ああ」
「・・・お風邪を召されないように、毛布をお持ちしましょうか?」
「・・・そうしてやってくれ」

結局彼らは名無しを起こすことを諦める。
勿論夕飯時には起こしてやるつもりだが、それも状況次第だろう。

「・・・困ったもんだな」

毛布を取りにいなくなったセバスチャンを見送り、シエルは名無しを眺めながら小さく溜息をついた。







春を待ち望む








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数少ない連載の番外編!
構想だけは前サイトの時点でありました。

2012.02.09
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