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屋敷に住み始めて5日が経った。
『……暇ぁ』
今日はシエルに家庭教師が来るからと***は自室に追いやられていた。
(追いやられた、と言うより***自身が自室にいる事を望んだ、が正しい)
暇潰しに書斎から借りた本は全然面白くないとベッドに投げ捨てられていた。
『やっぱり【自称天才の私が教える英国の政治学】はダメかぁ…』
ボンヤリと窓から庭を眺めれば、フィニが仕事をしているのが見えた。
持っているのは芝刈り機かもしれないけれど、庭の様子が何かおかしい。
『あ、芝生を全部刈り取っちゃってる……』
きっとまた執事さんに怒られる、と***はこっそりフィニに合掌する。
―コンコン
『はぁいー』
クルリと***が振り向くと同時に、開かれたドアの向こうからセバスチャンが姿を見せた。
『執事さん!』
パタパタと走り寄る***にニッコリとセバスチャンは微笑みかける。
「お暇でしょうから、お菓子をお持ちしましたよ」
『わぁ!ありがとうございます』
「坊ちゃんには内緒ですよ?」
バレたら欲しがりますからね、と付け加え隠し持っていた小さな包みを***に手渡した。
『クッキーだ!食べて良いですか?』
「えぇ。それからもう30分程で坊ちゃんの勉強も終わりますよ」
『はいっ♪』
「良い子ですね」
ヨシヨシと***の頭を撫でてセバスチャンは部屋から出て行った。
また一人になった***は貰ったクッキーを口に入れる。
『…おいし♪』
甘すぎず、サクサクした口当たりのクッキーに***の頬は自然と緩んだ。
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