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『…?』
遠くで爆発音が聞こえたような気がした。
「何?どうしたの?」
『ううん、気のせいみたい』
彼女の声に***は首を横に振る。
彼女はそう、とだけ呟きマジマジと***を見つめた。
「しかし…随分綺麗な服来てるのね」
『うん。シエルのお下がり貰ったの』
どう?と***はクルリとその場で一回回って見せる。
「最初アンタだって分かんなかったわよ。けどまぁ…似合ってるわよ」
『…ありがとう』
「けどそれって男物な訳よねー」
『そ、それは言っちゃダメ!』
「別に良いじゃないの。小さい間は体格差無いんだし」
彼女の尻尾が楽しそうに揺れる(いや、実際楽しんでいるのだが)
「そう言えば…アンタなんでココにいるの?」
ココとは裏庭。
元々夜行性の彼女は眠っていた所を***に起こされたのだ。
突然の彼女の質問に***は一瞬きょとんとして、直ぐに笑顔で彼女を抱き上げた。
『ありがとうって言いに来たの』
「は?」
『だって…ココに連れて来てくれたから、私は一晩路地裏で眠らなくて済んだ、それにこんなに良い服を貰った』
―だから【ありがとう】なんだよ?
彼女の黄色の瞳と***の黄色の瞳が交差する。
…最初に反らしたのは彼女の方だった。
「…私は切っ掛けをあげただけよ。屋敷の中で何があったのか知らないけど…それはアンタが頑張ったからでしょ?」
『……』
「まぁ…そうねぇ」
***の腕からスルリと彼女は抜け出し、地面に着地した。
「ココから追い出されたら慰める事ぐらいはしてあげるわ」
真っ直ぐ***を見つめ、そう言った彼女はクルリと背を向けスタスタと歩いて行く。
「じゃぁ私は寝るから。
あぁそれからどうせ会いに来たとか言って迷子になってんでしょ。たぶんここに来たのも偶然ね?
そこの道を真っ直ぐ行けば表の庭に出るわ、この時間なら庭師がいるし…案内して貰えば?」
それだけ言うと彼女は草むらに埋もれ見えなくなった。
『……迷子なのバレてる』
だけど、と***は思う。
(嬉しいなら嬉しいって言えばいいのに…)
あいにく彼女は猫だから、気持ちを読み取るには尻尾や耳の微かな動きしかない。
きっと彼女が人間なら顔を真っ赤にしながら、さっきのセリフを言ったのだろう。
『素直じゃないなぁ…』
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