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「#エロ」のBL小説を読む
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「今何時だ!?」

不意に目を覚まし、慌てて体を起こす。
咄嗟に口にした疑問はすぐ傍から返ってきた。

「午後7時14分でございます。ようやくお目覚めになりましたね」

燭台の灯りだけが暗闇を照らす中、セバスチャンが答える。

「何故起こさなかった?」
「執事として主人の体を第一に考えるべきという判断からです」
「は?」

らしくない発言に声を上げたシエルだが、食事のメニューを伝えたセバスチャンの行動に更に驚かされることになった。

「はい、あ――――ん」

リゾットの乗ったスプーンと向けられた笑顔。
反射的にぞわりと体中を悪寒と鳥肌が駆け巡る。

「なんの真似だそれは!?」
「あ、熱いですか?では私が冷まして差し上げます」
「気持ち悪いにも程がある!!今すぐやめろ命令だ!!」

かみ合わない会話に命令の2文字を出せば、セバスチャンの表情がいつものものに戻る。
ソーマの入れ知恵らしいセバスチャンの行動にシエルは“子供騙し”(甘え)だと一蹴した。



「―そういえば、4時頃タナカさんよりお電話がありまして、本邸の方にレディ・エリザベスがいらしているそうです」
「なっ、何故それを早く言わない!?」
「坊ちゃんにゆっくりお食事を召し上がって頂きたかったので、よく噛まなくては栄養の吸収率も下がりますし…」
「おい!あの平和ボケコンビの受け売りも大概にしろ」

食事を終え、着替えながらの報告(と要らぬ受け売り)に耳を傾ける。
4時と言えば既に最低3時間は経過している。
短く息を吐いたシエルに追い打ちをかけるようにセバスチャンから追加の報告が1つ。

「ああ、それから。***が本邸に戻りました」
「なっ?!どういう事だ!!」
「1つはエリザベス様がいらしたので、そのお相手をするために。もう1つはただ待っているのが寂しいからだそうです」
「だからと言って!あいつも狙われている可能性があるんだぞ!それを判っていてお前は***を本邸に返したのか?!」
「ええ。彼女をこちらに滞在させるようにと言う命令は受けておりません。それに本邸には彼らもいますし、何より彼女から言ってきた我儘ですから」
「…は?」

嫌な予感がする、とシエルは身構える。
続いた言葉は予想を裏切らない言葉だった。

「***ももう少し甘やかしてやるべきだとソーマ様が」
「あいつらの受け売りはもう十分だ!!ったく…もう本邸に戻ってしまったものは仕方ない…」
「***が本邸に戻りましたが、エリザベス様は坊ちゃんにお会いになられるまでご自宅にお戻りになる気がないそうなので、お早いお戻りをとの事です」
「ったく…ケルヴィン男爵の屋敷は調べてあるんだろうな?」
「ええ時間がたっぷりありましたので、ロンドンから鉄道と馬車で乗り継いで丸1日といったところですね」

指輪をはめ、渡されたシルクハットを頭に乗せたシエルはセバスチャンの答えに静かに前を見据える。

「お前なら1時間とかからずに行けるな?」
「ご命令とあらば」
「さっさと終わらせて本邸に戻るぞ」
「御意ご主人様」

セバスチャンを従えながら部屋を出て、階下に行けば目敏くソーマに見つかってしまった。
しかし「笑顔で騙す」という方法を手に入れたシエルは何の足枷もなくソーマの横を通り抜ける事に成功する。
閉じた扉の向こう側で騙された事に気付いたソーマが叫んでいたが、気に留めることなくシエルは屋敷を後にした。



そして同じ頃。
それぞれの場所で目的を持った者達が各々の為に動き始めていた。
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