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―うわぁぁぁ!!雪だ、雪だ!!

―っしゃぁ!雪合戦するぞ!!

―雪だるま作るだよ!!



『…ふぇっぷち!』

ロンドンにあるファントムハイヴ家の街屋敷。
明るく楽しい声が響く部屋に対抗しているのか、と言いたくなる様な暗い部屋に小さなくしゃみが響いた。

『何で皆元気なの…』

ずるりと鼻水を啜り、もそもそと毛布から顔を出した***は1人呟く。
そのすぐ後、毛布の中より遥かに冷たい空気に顔を顰めた。

『うぅっ、寒い…』

もう1枚中に着込もうかと、酷く緩慢な動作でベッドから降りる。
靴下を2枚重ねていても、床に足をつければひんやりとした冷たさを感じた。
着込むより、暖炉に火でも入れたら問題は解決するはずなのだが、今の***はそれすら億劫なほどになっていた。

『シエル達早く帰ってこないかなぁ』

今、この屋敷にいない二人を思い浮かべる。
“女王の番犬”の仕事として、二人はこの寒いロンドンを歩き回っているはずだ。
***自身その内容は知らされていないが、恐らく世間を騒がせているインド成金が襲われている事件に関係しているのだろう。
…そうでなければ、わざわざシエルが街屋敷に自ら行くなんて考えられない。

因みに今回、***は大人しく留守番をしようと思っていたのだが、屋敷の崩壊を恐れたシエルとセバスチャンが使用人ズもこっちに連れて行くということで、必然的に***もそれに付随する形になっていた。
(ついでに移動の最中の***の防寒対策が大変だった、とココで付け加えておく)




―カシャンッ!!

『ん?』

適当に上着を羽織り、また毛布に包まろうとしていたが、何やら音がしたため振り返る。

―カシャンッ!

音の正体は窓に雪玉がぶつかるソレだった。
外に出ている誰が投げているんだ、と外を覗けばメイリンとフィニが両手を振り、バルドが両腕に雪玉を持って、笑みを浮かべていた。
…どうやら投げたのはバルドらしい。
さらによく見ていると、3人とも何やら叫んでいるらしく、口が動いていた。
ガラス越しでは良く聞こえない、と部屋の温度が下がる覚悟で***は窓を開けた。

『さむっ…!』
「あー!やっと出てきたですだ!」
「おう、***!早く降りて来いよ!折角の雪なんだ、遊ぼうぜ!」
「ほらほら!タナカさんがカマクラ作ったんですよー!」
『え、かまくら?』

メイリンが手を振り、バルドが雪玉を見せつけ、フィニがカマクラを指差す。
中々興味の惹かれる言葉に、***も思わず窓から身を乗り出した。
外気に晒された窓の冷たさに一瞬、顔を顰めるが下の3人には見えなかったようだ。

「カマクラの中は暖かいよー!」
「おら、降りて来いよ。んで、タナカさんに熱い茶淹れてもらえ」
「それでお茶飲み終わったら、皆で雪合戦するだよ!」
「おう雪玉なら用意してる…ぜっ!」

メイリンの言葉にバルドが手にしていた雪玉を放り投げる。
綺麗な放物線を描き、雪玉は***が顔を出している窓の真上に落ちた。

『うわぁ・・・!バルド凄いね!ココまで届いたよ!』
「へっ、それぐらい朝飯前だぜ」

興奮して更に身を乗り出した***に、バルドは上機嫌で返事をする。
が、横で見ていた二人が慌てた素振りを見せるから、***が何事か聞こうとしたとき、上から冷たい固まりが首筋目掛けて降ってきた。

『ひゃぁぁぁぁぁぁ?!』

不意打ちにも程がある。
ビックリして飛び上がれば、冷たさがそのまま背中に降りてきた。
落ちてきたのが雪の塊で、それはバルドが投げた雪玉のせい。
その事を理解するに***はかなりの時間を要した。

『〜っ、ぅー・・・。バルドの馬鹿っ・・・!』

そしてありったけの気持ちを込めて叫ぶと、力任せに窓を閉め、カーテンで外と完全に締め切ったのだった。


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