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『う〜…』

もそもそと動くベットの中から、ニョキッと手が生えた。
それは何かを探し回るようにベシベシと周りを叩き、目的のものを掴むとスンナリと引っ込んでいった。

そしてしばらくの沈黙の後。


『う、嘘っ?!』

時計片手に、寝起きの***が慌てたようにベッドから飛び出した。

『あー、もう…何で、こう…』

ブチブチと1人文句を言いながら、***はさっさと着替えを済ます。
服は悩んだ挙句、リジーが来るから少し可愛いのにしておいた。
顔も洗ってないし、歯も磨いていない。
チラッと鏡を見たけど、急いでいる時に限って寝癖が酷い。
予定していた時間より、40分も遅く起きた自分を恨んだ。

『でも…冬が近いんだ。困ったなぁ…』

最近の寒さを思い出し、1人身震い。
そして手櫛で簡単に寝癖を直し、バタバタと顔を洗うために部屋を出た。


















『…ふぅ』

顔も洗って、頭もようやく起きてきた。
これから部屋に戻って、予定を組んで…
そういえば昼からエリザ…リジーとリジーのお母さんが来るんだっけ?
色々考えながら廊下を歩く***。
前から近づく足音に、邪魔にならないように…と少し壁際に寄った筈なのに。

「あ!***も来て!」
『え?』

グイッとフィニに腕を引っ張られ、***は引き摺られるように着いていった。

『フィニ!ねぇ、フィニ?!』
「良いからっ。みんな!みんなぁ!大変だよ!」

バタバタと休憩室に現れたフィニ。
けれど皆の返答は興味なさ気、といった感じだった。

「もーっ、みんな忘れちゃったの!?
 今日は特別な日だよっ!!」

その言葉に、***を覗いた皆がカレンダーに視線を移す。
***だけは少し、驚いたようにフィニを見た。

「***?どうしたの?」
『え、あ…な、なんでもないよ!』
「そう?だったら…」
『?』

中途半端に言葉を切り、フィニは視線を***の後ろに向けてしまった。
どうかしたのかと***が振り返るよりも先に、突然体が軽くなった。

『セバスチャン、さん…?』
「***を少々お借りしますね」

他の使用人たちに有無を言わせぬまま、セバスチャンは***を抱え休憩室を後にした。


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