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絡まった糸を解いていたはずなのに、気が付いたら最初より酷い状態になっていた。

今の***を説明するなら、こんな感じだろうか。




『・・・もぉ!』

壁に投げつけられた枕が、ボフッとあまり痛く無さそうな音を立てて床に落ちた。
投げた後に***は「しまった」と言う顔をして、片足を引き摺りながら枕を拾いに行く。

『全然わかんない・・・』

拾ってきた枕を抱え込み、消え入りそうな声で呟く。
その後、プチッと小さな音が響いた。










***の異変にシエルとセバスチャンが気付いた頃には、マダムの葬儀が終わってから1週間が経過していた。
シエルはカードゲームの相手をしてやった時に。
セバスチャンは紅茶を差し出した時に。
そして、その事を最初に口にしたのはシエルだった。

「***、ちょっと良いか?」
『どうしたの?』

どこかぎこちない笑みを浮かべる***の傍に行き、トランプを並べていたその手を掴む。
バラバラと床にトランプが散らばることに気も留めず、シエルは***の手を、指先を見つめ、少し言いにくそうに口を開いた。

「・・・お前、爪を噛む癖なんかあったか?」
『!!』

シエルの言葉に***は驚き、慌てて掴まれていない方の手を隠す。
その行動にシエルは小さく溜め息をついた。

「自覚はしていたのか・・・」
『これは、そのっ!〜〜〜離してっ!!』
「なっ?!」

珍しく大声を上げた***に一瞬、シエルの反応が遅れる。
その間に***は掴まれていた手を振りほどき、脱兎の如く部屋から飛び出していってしまった。
掴むものがなくなり、シエルの手が中途半端な位置で静止する。

「坊ちゃん?何かありましたか?」

杖も持たず廊下を走る***様と擦れ違ったのですが。
そう付け加え、ワゴンを押しながらセバスチャンが現れる。

「・・・セバスチャン。葬儀屋の言葉を覚えているか?」
「えぇ。それが何か?」
「もしかしたら僕は、大変な事をしてしまったのかもしれない・・・」

床に転がっていた***の杖を拾い上げ、シエルが苦々しげに呟いた。



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