no title | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


(1/6)

「寒い…」

真夜中、月さえも分厚い雲に隠された空の下。
いつもの上等な服では無く、平民階級の服に身を包んだシエルが呟いた。

「いくら貧民街でいつものお召し物が目立つとはいえ、やはりその服ではお寒いでしょう
 一雨きそうですし」

そう言いながら、自分のコートを貸そうとするセバスチャンを、目立つからとシエルは手で制す。

「ここに張っていれば本当に奴は来るんだな?」
「ええ
 入口はあそこしかありませんし、唯一の通り道はここだけですから」
「次に狙われるのは、あの長屋に住むメアリ・ケリーで間違いないな?」

今まで凭れていた壁から様子を伺いながらシエルは聞く。
ついでに辺りを見渡すが、連れて来たはずの***は…いなくなっていた。

「ええ
 間違いないと何度もお伝えしているはずですが?」
「たしかに…殺された娼婦達には「臓器がない」以外にも「共通点」があった


 だが、奴が殺す必要性はどこにある?
 それに僕は……




 …っ聞いているのかセバスチャン!
 それに***!いつの間に!」
「あ、すみません。つい」

まれに見る美人でしたので、と(嫌がる)猫を抱き上げるセバスチャン。
そのすぐ近くでは、何やら嬉しそうな目で猫を見つめる***。

「飼わないからな!戻しなさい!」
「はい…かわいいのに…
 …せっかく***様が見つけて来て下さったのに…」
「連れて来たのは***か!」
『だって…可愛かったし…』

トコトコとその場から逃げる猫を見つめながら、***はボソッと言い返す。
そんな***にシエルはうなだれ、勝手にウロウロするな、とだけ告げる。


「ったく…」

呆れながらシエルは壁に凭れ直し、少し記憶を溯らせた。



>>

目次へ

[ top ]