no title | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


(1/6)

「ねぇ…なんかするの?」
『へ?』

朝から甘ったるいにおいがするんだけど、と彼女が呟く。
その言葉に***は首を傾げて、あぁと思い出した。

『明日ね、養護院の子どもが来るんだって』
「最悪」
『え、即答?』
「当たり前よ!ガキに見つかったら体力無くなるまで追いかけられるのよ!?」

珍しく吼えた彼女に驚き、***が固まる。
そんな***を見て、ハッと彼女は我に返った。

「あんたは悪くないわね、ゴメン」
『え、あ、うん。えっと大変なんだね』
「…猫だもの、仕方が無いわってあんたも少し猫だったわね」
『少し猫、って何だかなぁ』
「間違って無いでしょ?」
『まぁ、ね』

苦笑いを浮かべながら***は答える。
所々抜けてはいるものの、忘れていた記憶を思い出した。

何で自分がイギリスにいるのか、とか、

(もともと日本にいてたのに)

路地裏に転がる前に何をしていたとか、

(仕事、だったとは言えゴメンなさい)

良い記憶も、悪い記憶も・・・ほぼ全部。

(でもシエルは居ても良いって言ってくれたんだよね・・・)

ボンヤリと別の世界に飛んでいた***は彼女の言葉に引き戻される。

「ま、こう言っちゃ何だけど、あんた猫で良かったわ」
『あ、何で?』
「犬だったら、絶対拾って無かったからよ」
『……』
「それに鼠だったら食べてたかもね」

キッパリと言い切った彼女に***は冗談か本気かなんて聞けなかった。
(人対猫でも彼女なら本気で食べそうな気がしたからだ)

『もぉ!私戻るからね?』

明日、養護院の子どもが来るのがそんなに嫌なのだろうか。
明らかに何だか八つ当たりされているじゃないかと、***は半分逃げる様に屋敷に戻った。




「とりあえず、元気そうね」

ばたんと閉められたドアを眺め、欠伸をしながら彼女が呟いた。


>>

目次へ

[ top ]