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夕方、日も段々傾いて来た頃、屋敷の前に1台の車が止まった。車から降りて来たのは初老の男性。
「やれやれ、本国は遠いな、まったく
ここに来るのも久し振りだ」
そう言いながら歩いて来た彼を玄関の階段で本を読みながら待っていたシエルが出迎える。
「来たか、クラウス」
「ボナセーラ シエル!元気にしていたか?」
クラウスと名を呼ばれた彼はシエルを軽く抱擁した。
玄関に行くまでにクラウスはシエルに背が伸びたかな?と聞くものの、変わっていないと一蹴される。
それでも彼が笑っているのは彼の人柄なのかもしれない。
「貴殿も相変わらずだな」
そう言いながらシエルはドアを開く。
その先で迎えるのは使用人達の役目。
「いらっしゃいませクラウス様」
「おお…これは…あの屋敷を綺麗にしたものだ」
呆気にとられるクラウスにセバスチャンが挨拶をし、フィニが荷物を受けとりに行く。
「そう言えば電話で聞いていた子がいないが?」
フィニに帽子を預け、辺りを見渡しながらクラウスはシエルに問う。
「服を与えたんだがな…恥ずかしいのか部屋から出てこない」
困ったものだ、とシエルは苦笑していると、セバスチャンが中庭へ二人を誘導する。
中庭という場所にクラウスは疑問符を浮かべるが、その先で疑問はなくなった。
「おお…!Prodigioso!-すばらしい-」
咲き誇る菖蒲、砂で表現された水の流れ。
目の前に表れた日本の石庭に感動するクラウス。
「ジヤッジーロが実に美しいな、枯れ木と花…"ワビサビ"というヤツか」
席に案内されながら感想をもらすクラウスの前にお茶が呈される。
そのお茶も湯飲みと急須で演出に一躍かっている(勿論タナカのだと言う事は言わない)
そしてクラウスがシエルにゲームを渡している頃。
別室で小さな事件が起きていた。
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