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「お口に合いましたか?」
セバスチャンの問いかけに***は必死に首を縦に振る。
冗談半分、本気半分で『パスタが食べたい』と言ってみたら本当にそれが出て来て驚いた。
しかもパスタは感動して無言になってしまうほど美味しく、食べ残さないようにと***は必死だった。
『ごちそうさまでしたっ』
「今のは?」
パンッと両手を合わせた***にセバスチャンは首を傾げる。
『え、ごちそうさま…知らない、ですか?』
「知らないと言うか…初めて見ましたね」
『何だろう…食事をありがとうございました、みたいな感謝の気持ち?だと思うんです』
よく判らないけど、と***は付け足しシエルの部屋に行ってしまった。
「彼女は…何者でしょうか」
礼儀は良いので、昔は貧民層ではないはず。
それから英国生まれ(もしくは育ち)の可能性は低い。
英国には「ごちそうさま」の習慣はない。
それから飛び下りた時に彼女から感じたのは人と正体の判らない何か。
その何かを***が隠しているのかさえ判らない。
「情報が…少ないですね」
―どうしましょうか
ポツリとセバスチャンは呟いた。
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