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「フィニアン」
「はいっ!!」
突如名を呼ばれ、フィニアンは姿勢を正す。
「梯子を持って来てください、一番長い物を」
***を下ろさなければ行けませんと言うセバスチャンに、フィニアンは汗をかきながらぽつりと呟いた。
「……ました」
「はい?」
「…梯子…壊しちゃいました」
「なっ…」
「昨日、片付けようと思ったら納屋の扉にぶつけて…どうせ使わないからって黙ってて……うわぁぁあん!!ごめんなさいぃぃ!!!」
「これは…困りましたね」
自分の足下にしがみつくフィニアンと木にしがみついて泣き出しそうな***を見比べる。
―客人に余りさせたくないのですが…
「フィニアン、メイリン…少し離れていてください」
「「?」」
セバスチャンは来ていた燕尾服を脱ぎ、それをメイリンに投げる。
「持っていて下さい」
「っ…は、ハイですだぁ!!」
「(……うわぁ、メイリンさん顔真っ赤)」
「***様!」
『っ!?』
恐る恐る下を見れば、セバスチャンが何かを言っている。
「飛び下りて下さい!」
『えっ!?そんなっ、無理ですっ!』
「…私が受け止めます」
『で、でもっ…』
―飛び降りれる高さじゃないよ…
「それしか方法が無いんです、梯子はそこの庭師が壊しちゃいましたからね」
「セ、セバスチャンさん!?」
チラッとセバスチャンに見られフィニアンは泣きそうな声を出す(いや既に泣いていた)
「***様!」
『〜っ!!』
震える足でゆっくりと座っていた枝の上に立ち上がる。真っ直ぐ前を見ればお屋敷の2階の窓が見えた。・・・随分と背の高い木に登ってしまったらしい。
『い、いきますっ…!』
幹に触れてた手を離し、体を前に倒す。
そのまま体は下に向かって落ちて行く。
怖いから目を瞑る、風を切る音がした。
―ドサッ…
受け止められた感覚。
恐る恐る目を開けると黒の中の赤と目があった。
「お疲れ様です…頑張りましたね」
クスリとセバスチャンが笑う。
***の中でプツンと何かが切れた。
『うぁぁぁあん!私…私っ…ごめっ…ごめんなさい!!』
怖かったとか、怒られるとか、追い出されたらとか、全部が全部言葉にならなかった。
「全く…心配したんですよ?」
ひたすら泣き続ける***を抱かかえながら、セバスチャン達は屋敷へと歩き始めた。
彷徨う−後編− END
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