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『お腹空いた…』
チラッと外を見れば空も随分と明るくなってきていた。
***はまだ屋敷内を当ても無く歩いている……迷子になったから。
『……?』
ふっと鼻をかすめた匂いに首を傾げる。
歩いていけば、3つほど先のドアから匂いがもれていた。
中を覗けば、調理服を着てタバコをふかした男が作業の真っ最中だった。
「あん?誰だ?」
『!!』
見つかるなんて思っていなかった***の肩がビクリと跳ねる。
隠れてないで出て来いと言う男の言葉に素直に従い、***は姿を見せた。
「今日の客人か?いや、違うよな…」
『あ、の…』
「お前腹へって無いか?」
『え?』
何で、という前に男に「顔に書いてある」と指摘された。
『っ…!』
「ま、ガキは食べて遊ぶのが仕事だからな!ほら、食うか?…ハムの切れ端だけどよ」
『え、でも…』
「俺が怒られるって?気にすんな!人の好意は有り難く貰うもんだぜ?」
豪快に笑いながら男は***の頭を撫でる。
断るに断られなくなった***は貰ったハムに口を付けて厨房を後にした。
「さぁて肉でも焼くか…っと」
男は肩を回し、首から提げていたゴーグルを装備する。
そして何処から出したのか、火炎放射器を肉に向けた…。
彷徨う−前編− END
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