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「そうですか、じゃぁお部屋の準備が必要ですね」
「あぁ頼んだ」
「畏まりました」
『えぇぇぇ!?あ、あの?わた、私っ…』
目の前で進んで行く会話にようやく我に返った。
パニックでうまく喋れない私にシエルがフッと口角をあげた。
「お前は僕に斬新な発想をくれた、と言う事はお礼が必要だ。だから僕はお前が此所に住む事をお礼として提示した」
何か不満か?何て言われたけどブンブンと首を横に振る事しか出来ない。
こんなお屋敷にいきなり住めるなんて夢みたいだから。
「改めて名乗るが、僕はシエル=ファントムハイヴだ。シエルで構わない。で、こっちが…」
「ファントムハイヴ家執事のセバスチャン=ミカエリスと申します」
黒い人…もとい何たらミカエリスさんがお辞儀をした。
だから私も名乗って勢い良くお辞儀をした。
『あ、***です。よろしくお願いしますっ!』
『夢、みたい』
もらったお部屋はシエルの横だった。
何人でも寝転べそうな広い部屋、路地裏みたいに風も吹かない、新聞紙よりも高級なベッド。
それに数日振りにお風呂に入ってスッキリする事も出来た。
貰った服はシエルのお下がり、新しいのを買いに行くって言われた。
……お下がりでも十分なのに……
何気なく見た月は彼女の瞳みたいな黄色で輝いていた。
―明日、此所にいるよって伝えなきゃいけないな。
―それから此所に連れて来てくれてありがとうっても言わなくちゃ。
そんな事を考えながら、私はいつの間にか眠りについた……
下される END
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