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『…思い、つきました』
僕の顔を見てから商品をずっと眺めていた彼女が顔を上げた。
「早いな、言ってみてくれないか?」
とは言ったものの所詮素性の判らないガキ。
大した考えでは無いだろうと見下していた。
『えっと…なんて言ったら…リュックってお出かけの度に中身変わりますよね?』
「あぁ」
確かに中身がずっと同じの鞄類なんて有り得ない。
が、子どもなのにそんな視点があるのには少し見直した。
『だから…その…中身と同じで、外も変えられたらなって…』
「……」
『今日は耳にリボン結んであげるとか、明日はリボンタイをつけてあげるとか…』
「…着せ替えか?」
『あ、それです!本当はお洋服もって思ったんですけど…お洋服着せたらリュックの機能が無くなるから…』
だからお洋服は諦めちゃいました、と彼女は苦笑いをして僕に商品を返した。
……大した発想力だと思う。
確かに商品の種類は多い方に越した事は無い。
が、リュックと言う形態は1個か2個あれば事足りるから多種類の生産には向かない。
それをリボン・ネクタイだと言った小物をつける事でバリエーションを飛躍的に拡大にさせる。
しかも小物の種類を増やせば客<子ども>の「自分だけの物」と言う感性を刺激させる。
つまりシリーズ化させれば継続的に客がついて来るということ。
……どうやらとんだ迷子を拾ってしまったようだ。
―コンコン
「失礼します、お茶をお持ちしました」
ワゴンを押したセバスチャンが部屋にやって来た。
目が合った僕は笑顔で彼に言ってやる。
「セバスチャン、彼女をこの家の一員として迎える事にする」
・・・と。
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