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『うわぁ』
走る彼女を追いかけて辿り着いたのは立派なお屋敷だった。
彼女は慣れた足取りで裏庭へと回り込む。
「そこに隠れてなさい」
それだけ言い残すと彼女は堂々と裏庭に入り込み、チョコンと座る。
言われた私は素直に裏門の陰に身を隠した。
「来るわよ」
彼女が言ったのと同時にお屋敷の裏口が開いて、上から下まで真っ黒な人がやって来た。
『………』
その人は彼女にご飯をあげて、彼女を抱き上げ、それは幸せそうな顔をしていた。
彼女も食事をもらって満足そうにしている。
私だけが物陰に隠れてジッとしているだけ。
……これの何処がいい所なんだろう。
彼女と黒い人にとってのいい所じゃないんだろうか。
確かにこんなお屋敷に住めたら、食事はお店から盗んだり、ゴミ箱から漁らなくても満足に食べられる。
洋服だってこんなぼろ布みたいなのじゃないもっと可愛い洋服が着れるんだ。
それに中にはたくさんの「使用人」って人がいて、お嬢様って呼ばれたりするんだよね……
「おや?」
「ちょっと何ボーッとしてんのよ」
『…え?…っ!?』
彼女の声に慌てて顔を上げる。
そこには彼女を抱えた黒い人が立っていた。
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