no title | ナノ


(3/4)

―一方・・・

「――くそっ、あいつら俺の計画を台無しにしやがって」
「元気出して・・・また次があるじゃない」

イーストエンドの片隅。
家屋に背を預けしゃがみ込むウエストとそれを宥めるミーナの姿がそこにはあった。
その2人の背後に1つの影が忍び寄る。

「そうそう、また次がね。やあご両人、お疲れ様」
「!?お前は・・・?」
「伯爵は小物は放っとけって言ってたけど、一度やる奴は何度もやっちゃうモンなんだよね。その辺まだまだ甘いんだよなぁ
 ま、そんなぼうやなトコが可愛いんだろうけど」

驚くウエストに名乗るなんてことはせず、劉は言葉を続ける。
そして不意に目を開き漆黒の瞳が現れたのを合図にウエストたちを挟むようにもう1つの影が現れた。

「我の庭(イーストエンド)を荒らした悪い鼠にはしっかりとお灸をすえないとね」
「!?」
「そのために飼っている猫だ」

現れた影−藍猫−が手にしていた鈍器がその手を離れ地に落ちる。
余程重たいらしいそれは落ちた場所の石畳を粉砕する。
鈍器の重さ、それを簡単に手にしていた藍猫、その他全てに恐怖を抱くウエスト達。

「ニャオ!」

そんな彼らを馬鹿にしているのか。
それとも元々そういう合図なのか。
とにかく合図が送られ、藍猫が動き出す。
直後、情けない悲鳴がイーストエンドの片隅で響きわたった。







そして話は水晶宮に戻る。

『だいじょうぶ?』
「ぐず・・・ずびっ・・・」
「いつまでも泣いてるんじゃない!お前17歳って言ってなかったか?これで拭いて・・・」

鼻を啜るまでに漸く落ち着いたソーマのためにコートのポケットからシエルはハンカチを取りだそうと引っ張り出す。
が、目的のハンカチと一緒に見覚えのない、しかし見覚えがある1通のレターが一緒に姿を現した。

『あ、お手紙だ』
「いつの間に!?」
「ああ、先程女王陛下の従者の方が入れてましたよ」
「何故言わない!?」
「聞かれませんでしたので」

さらりと答えるセバスチャンに舌打ちをしながらシエルは封筒を開ける。
中に入っていたのは手紙と他の紙。

「ん?チケット?」
「クリスマスプレゼントじゃないですか?ぼうやへの」
「殺すぞ」

セバスチャンの嫌味に眼光鋭くしてシエルは言葉を吐き捨てるが、次には疲れたと心情を吐露した。

「屋敷に戻ってゆっくりお茶(ハイティー)が飲みたい」
「かしこまりました。アッサムの特級茶でご用意致しましょう、夕食は私が腕によりをかけて最高のカリーを」
「冗談はよせ。しばらくカリーの顔はみたくない」
「御意」
「そういえばそのチケットはなんのチケットだ?」
「ええと・・・」

シエルから預かった封筒を開けてセバスチャンが中身を確認する。

“NOAH'S ARK CIRCUS”

そうチケットには記されていた。

「サーカス・・・ですね。それから枚数が3枚」
「・・・3枚だと?」
「ええ、3枚。です」
「・・・まさか・・・」
『?』

シエルとセバスチャンの視線が揃って***に向けられる。
当の***は理解しておらず、ただ小首を傾げるだけ。

(おい、まさか)
(手紙を見ていないのでなんとも。・・・ですが・・・)
(陛下がチケットの数を間違えるなんて有りえないはずだ・・・)

2枚で良いはずのチケットが何故か3枚。
その意味をシエルはあまり考えたくなかった。



彼女と“初めまして” END


<< >>

目次へ

[ top ]