no title | ナノ


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『・・・ごめん、なさい・・・』
「謝るな。どうせ人の話を聞かなかったんだろ?」
『・・・うん』

部屋に入ったはいいが邪魔をしたため、ソーマたちは直ぐに部屋を追い出された。
逆に残された***は空いた椅子に座り、言いつけを破った事を謝っていた。

「・・・不可抗力だろ?それに、今回はセバスチャンが家庭教師(チューター)だから、セーフじゃないか?」
「そうですね。これが家庭教師(ガヴァネス)のマダム達だと、問題でしたが・・・」
『うっ、ごめんなさい・・・』
「だから謝るな。それより***。昼過ぎにクリスマス限定商品のチェックがあるから、忘れるなよ」
『あ、うん』

じゃぁ話は終わりだ、とシエルが席を立つ。
***も慌てて立ち上がり、後を追いかける。
退室間際に盗み見たキャンバスは残念なことに書きかけで終わっていた。




















そして昼食後。
工場から届いたというクリスマスの限定品の山を目の前に、***の瞳は輝いていた。

『う、わぁぁ・・・!』
「ヨークシャーの工場から届いたクリスマス限定品のサンプルですよ」
「***。これがお前の改善案を採用した商品だが・・・どうだ?」

商品の山を掻き分け、シエルが***に投げ寄越したのはビターラビットの商品。
それを受け止め、***は四方からチェックする。

『うん。こっちの方が可愛い。それから・・・手触り、変わった?』
「あぁ、前回のサンプルから手触りの面も作り直しさせた」
『そっか』
「坊ちゃん。本社より来年度の企画が届いております」
「判った、歩きながら聞く。***、他に気になるところがあれば後で教えてくれ」
『はーい』

仕事の話だから、と言う遠まわしな知らせに素直に頷いて、***は他のサンプル品をチェックしていく。
そんな時、ふと視界の端でサンプルの山が動いた気がした。

『・・・?』

崩れたら大変と***が近寄ろうとした矢先。
サンプルの山から飛び出してきたのは、ソーマだった。
どうやら企画を携えて、隠れていたらしい。
その証拠に傍に控えるアグニの手には、紙が握られていた。

「インドの神ガネーシャをモデルにした象の人形で、なんと!!」

自信たっぷりなソーマの説明に、紙芝居をするようにアグニが紙を持ち直す。

「鼻が!動く!!」
『・・・』

イラストだけの文字のない、たった2枚の企画書。
何とも言えない顔で***はシエルを見て、ひっそりと溜息を付いた。


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