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(2/5)

「失礼します。・・・***さ・・・おや?」
『おはよう・・・ございます』

数分後。
僅かに開かれたままのドアを不審に思ったセバスチャンが***の部屋を覗いたと同時に、ゆらりと***が現れた。

「まだお目覚めには早いのでは?」
『・・・知らない、誰かに・・・起こされまし、た・・・』
「知らない誰か、ですか?」
『・・・はい。英国じゃない、格好の、人・・・』

ゴシゴシと片目を擦りながら、***はポテリと懐中時計を確認したセバスチャンに凭れ掛かる。
セバスチャンが慌てて***を受け止めれば、彼女は普段まだ眠っている時間のせいか眠たさと不機嫌を前面に押し出した表情を浮かべていた。

「眠たければまだお休みになられていても宜しいんですよ?」
『ベッド、冷たくなっ・・・ちゃったんです』

寒い、と呟く***は誰から見ても着込んでいるのだが、どうも彼女はまだ寒いらしい。
その辺の感覚がセバスチャンには理解できないのだが、とりあえず知らない誰かとやらは来客の彼で間違いないだろう。

「***様。お部屋の暖炉に火を入れましょうか?」
『あい・・・』
「ではお部屋に」

今にも寝てしまいそうな***に息を一つ吐くと、セバスチャンは***の手を引いた。
そして慣れた手つきで暖炉に火を入れ、換気のため最低限の隙間分だけ窓を開けると***に向き直る。

「僅かですが、換気のため窓を開けています」
『・・・あい』
「間違っても寒いからと閉めないでくださいね」
『・・・あぃ・・・』

毛布に包まりベッドに腰かけてはいるが、瞼は完璧に閉じてしまう一歩手前。
体全体で舟を漕いでいる***は誰が如何見ても、セバスチャンの話を聞いているようには見えない。
けれど彼はその事に気を悪くするわけでもなく、一通りの注意を述べるとさっさと部屋を出て行ってしまった。


―あの状態で手を出せば、何かしら攻撃を食らいますからね・・・。


起きているように見せかけて既に***は眠っている。あれは機械的に返事をしているだけ。
その事を咎めようものなら、睡眠妨害だと判断されてしまうのだ。
・・・季節限定とは言え、なんとも迷惑な爆弾である。

事実、セバスチャンが戸を閉めたと同時に***の体はポフリと崩れ落ちた。
その後薪の爆ぜる音に紛れて、部屋には小さな寝息が響くのだった。



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