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「#エロ」のBL小説を読む
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(2/8)

「お部屋に居ないから探しましたよ。それから…
 嗚呼、さすが坊ちゃんとは違いますね、1人で着替えがお済だ」
『?』

事態が飲み込めない***は、ただ首を傾げる。
シエルの部屋に行くのかと思いきや、どうも行き先が違う気がする。
この方角は…屋敷の玄関だ。

「見つかったか」
「えぇ」

***の予想通り、玄関に連れられ***の足はやっと地についた。

『シエル?誰か来るの?』
「あ、あぁ…来れば、いや。見れば判る」

どこか引きつった表情を見せ、シエルはそのまま扉を直視する。
***はそんなシエルを眺め、珍しい、と小さく呟いた。
微妙に肩のラインがずれたジャケット。
ボタンが留められていないから、開けた襟口。
それを緩く締められたネクタイが、更にだらしなさを強調している。
そして時間がなかったのか、寝癖で飛び跳ねた髪。

…すごく、らしくない格好だ。
何か相当慌てることがあったんだ、と1人***は納得する。
そして微かに馬車の音が耳に届く。

「来た」

突如、ポツリとシエルが呟くから、***は慌てて姿勢を正して訪問客を待った。









「お久しぶりにお目にかかります。ミッドフォード公爵夫人
 今日“も”また予定よりお早い到着で…」
(今日も、って事は何時も早いんだ…)

***がそんな事を考えている間に、公爵夫人はシエルが寝起きだと言うことを見抜いてしまった。
そしてシエルに抱きついたエリザベスを嗜めた後、セバスチャンに目を向ける。
ところがセバスチャンが挨拶するも、公爵夫人は彼を直視したまま一言も発しない。
やがて発した一言は「いやらしい顔だな、お前は!」と言うものだった。

「生まれつきこの顔でして…」
「それに!」

婦人が対応に困っているようにも見えるセバスチャンの前髪を掴む。

「執事も主も男のクセにダラダラと前髪を伸ばしおってうっとうしい!
 タナカを見習え!!」
 
…セバスチャン相手に一喝したのだった。

そしてどこから取り出したのかブラシを片手に、セバスチャンとシエルの前髪を上げて行く。

「お手数おかけして申し訳ありません…叔母様…」
「全くだ」
『…うわぁ』
「えー…あんまり可愛くない…」

結局シエルは七三分けにされ、微かな怒りと共に体を震わせ、セバスチャンはオールバックにされても一応笑みをはりつけていた。
そんな二人を見て、***とエリザベスは思い思いの感想を漏らした。


「ところでずっと気になっていたんだが…」

不意に視線が***のほうに注がれる。
挨拶をしろということだろうか。

『ぁ、初めてお目にかかります…
 こちらに住まわせていただいてます、***と申します』
 
昔の記憶を辿り、失礼の無いようにお辞儀をする。
ところが相手からは何の反応も返ってこない。

「…」
『…あ、の?(どうしよう、裾を摘んでお辞儀しない方がよかったのかな…)』
「…ハァ
 抜き打ちで来てみれば相変わらずお前はダラダラ執事はいやらしい
 まともなのは***だけじゃないか!」
 
どうやら***の礼儀作法は問題ではなかったらしい。
シエルとセバスチャンを差し置いて、まともだと言われるのは複雑な気持ちだが、***は安堵の息を吐いた。



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