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その日、葬儀屋は“お客さん”が来たからと、店の奥に下がってしまい、***は1人カウンターに突っ伏していた。
『・・・ぁ』
ふと思い出したように、顔を上げて店内を見回す。
店の隅っこの方に、***が探していたものは置かれていた。
『私、もしかしたら、あれに入ってたんだよね・・・』
死んでいると思って***を拾った葬儀屋が作っていた棺。
白くて他のより小さくて、途中までしか装飾が施されていない。
『でも、生きてるんだよね、これが』
人を殺すという罪。
マダムも***も同じことをしているのに。
マダムは死んで、***は生きている。
・・・一体どうして?
マダムの葬儀から、ずっと考えていたこと。
『きっと、形が違うだけなんだよね?』
マダムは自分の命で、***は生きる事で罪を償う。
償う形が違うだけ、償うと言う事には変わりがない。
『私が生きていれば、流れた情報を頼りに狙ってくる奴がいる
それが生きる事での、リスク。そして償い
だけど・・・私は逃げる手段も持っている』
父親が最期に教えてくれた、最後の名前。
その名を呼べば、***の記憶は人々から消える。
リスクの無い、1からの平和な生活を送ることが出来る。
とても甘い誘惑。
『でも、私はそれを使わない。
・・・誰かがもう良いよ、十分だよって言ってくれるまで』
誰かが十分償ったと認めてくれるそのときまで、逃げないと決めた。
『それに・・・餌になれるなら、なろうと思う』
元々、女王やその番犬・・・つまりシエル達を消すために***は、Killer-Kittyは作られた。
そしてシエルは、先代達を殺した奴らを待っている。
***がシエルの傍にいることで、奴らをおびき寄せる可能性があるのなら。
大人しく、おびき寄せるための餌でいようと思う。
『・・・うん、頑張ろう』
薄暗い店の中で、***は1人答えを見つけた。
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