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(2/5)

朝と晩だけは決まった時間に寝起きする。
それ以外はまるっきり時間に縛られない。
よく言えば自由、悪く言えば自堕落。
葬儀屋の所での***の生活はそんな感じで過ぎていく。


『そう言えば、テイカーはなんで私を拾ったの?』
「えー、話してなかったかい?」

あまり動けないと言う事も加担して、1日の大半を葬儀屋の膝の上で過ごしていた***は見上げるように問いかけた。

『うん』
「そうだねぇー・・・」

記憶を手繰るように考える仕草をした後、葬儀屋が出したのは短い答え。

「そこにいたから、かな」
『何それ』
「そのままの意味さ。気になって拾ったら、まだ生きていて、それが***だった。それだけだよ」

素直に答えたと言うのに、まだ納得してない顔の***に葬儀屋は***を抱き上げる。

「じゃぁ***はさ。

 小生にどんな答えを望んでいるんだい?」
 
両手から伝わる重さは、拾い上げた時より軽い。
一瞬見開かれた黄色の瞳はこっちを見た後、すぐに反らされる。
分が悪くなったときに見せる、彼女の悪い癖。

「***、ちゃんとこっち見て」

そう言えば、しぶしぶと言った感じでこちらに向き直る。

『裏通りは・・・毎日が弱肉強食で。毎日行き倒れる人がいるのに。
 私だってそのうちの1人だったのに、何でかなって・・・』
「ふぅん・・・」

黄色い瞳がゆらゆらと揺れる。
不意に、今までダラリと垂れていた***の手が口元に添えられる。
それを見つけた葬儀屋は***を膝の上に下ろし、そっと後ろから抱きしめる。
自然な動作で***の手を口から遠ざけながら。

「あまり人間って一々理由を考えて動いてないと思うんだけどなぁ
 無意識って言葉があるのが何よりの証拠じゃないかい?」
『そうかな?』
「そうさ。じゃぁ聞くけれど、今***はどうして爪を噛もうとしたんだい?」
『え・・・?』

葬儀屋の言葉に、***は一瞬唖然とする。
理由を考える以前に、爪を噛もうとしていたことにさえ気が付いていなかった。

「ほら、無意識だろう?」
『うん・・・』


―なんでだろう

―テイカーが妙に意地悪・・・な気がする


自分を包み込む、自分より少し冷たい手を見つめながら、***はそんなことを思った。


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