no title | ナノ


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「失礼します」
『え。な、何ですか?!』

さっと***を横抱きにして、セバスチャンは部屋を出る。
突然の事に***も呆然としていたが、我にかえると顔を赤らめ、下ろしてと訴え始めた。

「構いませんが・・・歩けますか?」
『・・・!む、無理です・・・』
「では、大人しくしていてくださいね」

ニッコリ。
そう音が出そうな笑みを見せると、***は大人しくセバスチャンの腕の中に納まった。


「・・・何してるんだ、お前ら」
『あ・・・』

たまたま開いたドアからひょっこりとシエルが顔を見せる。
その手に本がある事から、それを取りに部屋にいたのだろう。

「坊ちゃんのところにお伺いしようと思っていたのですが・・・丁度良いですね」
「?」
「坊ちゃん。数日、葬儀屋さんの所に***様を行かせても宜しいでしょうか?」
「・・・は?」

思わぬセバスチャンの申し出に、シエルは***とセバスチャンを何度も見比べた。

「今の***様には、1人で考える環境が必要だと思います。
 それに一番適したのが、葬儀屋さんの所かと。
 ・・・少々不満でしょうけど」
「あぁ・・・だが劉の所よりは良いに決まっているだろう。
 セバスチャン、直ぐに馬車の手配を」
「かしこまりました」
『え、そんな・・・』

わたわたと慌てる***の元に、一瞬部屋に戻ったシエルが近寄る。

「・・・気にするな。ゆっくりして来い。
 それから、忘れ物だ」
『あ、ありがとう・・・』

差し出された杖を受け取り、へにゃりと***が笑みを浮かべた。

「おや、今ちゃんと笑いましたね」
「そうだな」
『え?』
「最近ずっと、どこかぎこちなく笑ってたからな
 心配してたんだ」
『あ、ご、ごめんね?』

しゅんとしてしまった***の頭をシエルはそっと撫でた。




その後、わずかな荷物と共に***は手配された馬車に乗り込み、葬儀屋の元へと旅立った。



異変  END
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