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『・・・質問、良いですか?』
しばらくして、黙り込んでいた***がゆっくりと口を開いた。
「何でしょう?」
『シエルがココで一番偉くって、執事さんはシエルの執事さんですよね?』
「えぇ」
セバスチャンは***が名前で呼ぼうとしない理由を知らない。
だから「執事さんはシエルの執事さん」に違和感を覚えるが、間違ってはいないので肯定の意を示す。
『タナカさんもバルドもフィニもメイリンも、皆このお屋敷で働いているんですよね?』
「そうですね」
果たしてあの4人が“働いて”いるのかは謎だが、立場は使用人なのでこれもやはり肯定を示す。
『・・・じゃぁ、私は何ですか?』
「申し訳ありません。質問の意図・・・質問の意味が判らないのですが」
『そのままです。このお屋敷で、私はどういう立場なんですか?』
「・・・」
本当に、目の前の少女は10歳なのだろうか。
普通ならばこんな質問を投げつけたりはしないだろう。
と、セバスチャンは内心驚く。
『・・・質問、変えたほうが良いですか?
何で、マダムは死んで、私は生きているんですか?』
「***様・・・?」
『同じように人を殺したのに。
数だって私のほうが多いのに、何で?』
震える声で、***が訴える。
目には涙を浮かべ、縋るようにセバスチャンの手を握りながら。
(嗚呼、確かにこれはマズイです)
下手な一言を与えてしまえば、確実に***は崩れて壊れる。
そうならないためにも、***自身で答えを見つけるべきだろう。
それには落ち着いて考えられる環境を与えるのが先決。
セバスチャンはそう判断を下した。
(恐らくあの場所なら坊ちゃんも異論はないでしょう。
・・・あくまで異論であって、不満はあるかもしれませんが)
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