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『痛い・・・』
走る、なんて無謀な事をしてしまったが故に、悲鳴をあげた足を擦って労わる。
這い上がるようにしてベットに登ったけど、多分これ以上は動けないだろう。
もしもシエルが怒りに来たら、もう逃げられない。
『どうしたら良いの・・・』
頭がパニックになって、何も考えられない。
考えられないのが悔しくて、涙が出る。
その事がどうしようもなく、苛立ってくる。
そんな事に苛立つ自分が、よく判らない。
判らなくなって、頭がパニックになる。
見事なまでの悪循環に***は陥っていた。
『わかんない、判んない、判んないよぉ!!』
何も考えずに傍にあった枕を力任せに投げつける。
けれど、いつまで経っても落下音がしない。
そのことに***が不審がっていると、不意に声がした。
「・・・随分な歓迎ですねぇ」
『あ、執事さん・・・』
ドアの直ぐ近くで、枕を受け止めていたセバスチャンが立っていた。
「何が判らないのです?」
『・・・』
問いかけに答えない***に肩をすくめ、セバスチャンはベットへと向かう。
彼が一歩一歩進むたびに、***はジリジリと壁の方へ逃げようとした。
「何もしませんよ。ただ・・・心配なんです」
枕をベット元に返し、怯えた***の手に触れた。
「あぁ、ほら・・・こんなに痛々しい」
『・・・』
「痛くはありませんか?」
噛みすぎて、ボロボロになった***の爪先を労わりながらセバスチャンが問う。
「それに・・・また泣いていましたね。まだ涙が残っています」
目尻に残った涙を拭ってやり、セバスチャンは他にも***に言葉をかける。
・・・ゆっくりと彼女の本心を聞き出すために。
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