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(2/7)

澄み切った空に教会の金が鳴り響き、子供たちが笑いながらその前を駈けて行く。

「にいたん」
「あん?」
「教会今日いっぱい人がいるね、なんでだろ?」

多くの馬車や喪服を身に纏った人達を眺め、小さな子供が素朴な疑問を口にする。
そばにいた年長の少年は「さぁー?」と軽い言葉を返した。

「にいたんはにいたんなのに知らないの?ばか?」

口を膨らませ、文句を言う子ども。
それに便乗する様に一番幼い子も、ばかー?と続けた。

「なっ、オレはまだ12歳なんだから知らなくてイイんだよッ」

ばかと言われ、焦る少年。

「そうだね
 子供は知らなくて当〜〜然だ」

少年を擁護する様に、何処から現れたのか葬儀屋がいた。
突然の出没者に怯える子供達を気にする事無く、ヒッヒッと葬儀屋は話続ける。

「今日はねぇ
 とある貴婦人の晴れ舞台なのさ」
「晴れ舞台…?」

思わず聞き返した少年に葬儀屋は

「そ。
 人生最後にして最高のセレモニー


 お葬式だよ」

そう返した。













神父の言葉が響く中、参列者は死者に花を添え、そして故人に涙し嗚咽をもらす。
その嗚咽がまた人の涙を誘って行く…


「アン叔母さま…」

参列したエリザベスは皆と同じように白い花を添える。
棺の中に横たわるマダムは白い服に身を包み、白い百合に囲まれていた。

―ガチャ…

扉の開く音がした。
かと思えば、ざわめきが波紋の様に広がり始める。

―コッ…

石畳に靴音が響く。
そして振り向いたエリザベスはその人の名前を口にした。

「シエル…!」

胸に赤い薔薇をさし、真っ赤なドレスを抱えたシエルは迷う事無く真っ直ぐ進む。
周りの歓迎とは言えないざわめきも気にしない。
そして棺の前に立ったシエルは赤いドレスを棺に被せた。

「貴女には、白い花も地味な服も似合わないよ
 貴女に似合うのは情熱の赤
 地に燃えるリコリスの色だ」

そう言い胸にさしていた薔薇をマダムの髪に添える。

「アン叔母さん」

綺麗な顔で眠るマダムの頬に触れ、シエルはそっと額を近付けた。

「――あ」

思わずエリザベスが声を上げる。
教会の中に真っ赤な薔薇の花びらが舞い上がっていた。


「――おやすみ、マダム・レッド」

シエルが最後の別れを告げる。
その脳裏に元気だったマダムの姿が横切った。


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