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―ビシッ
投げられた死神の鎌を指2本でウィリアムが受け止める。
そのまま無言でセバスチャンと睨み合うが「…お忘れ物ですよ」と言う声に軽く頭を下げた。
「では、失礼致します」
最後にそう言い足音と引きずられる音を残しながら死神達は、夜の闇に消えて行った。
「申し訳ありません
もう一匹を取り逃がしました」
「…いい
もう…いい」
マダムから目を離さず、静かにシエルが呟く。
そばまでやって来たセバスチャンは、そっとシエルの頬に触れた。
「とても冷えておいでだ
早く町屋敷へ戻りましょう
お約束通りホットミルクをお淹れしましょうね
それから***様をお医者様に診て貰いましょう」
「……そうだな」
ふっと目を閉じ、シエルは立ち上がる。
「坊ちゃん!」
しかしよろめいてしまい、慌ててセバスチャンが腕を伸ばす。
―ばしっ
差し出された腕をシエルははたき返す。
眼帯の無くなった両目が真っ直ぐセバスチャンを捕らえた。
「坊っ…「いい」
セバスチャンの言葉を遮り、シエルが呟く。
「大丈夫だ
一人で立てる
ただ…
少し…
疲れただけだ…」
静けさを取り戻した夜の町に、その声は溶けていった。
そして終結へ END
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