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カシャンと音を立て、高枝ハサミが元に戻って行く。
「私、死神派遣協会管理課のウィリアム・T・スピアーズと申します」
そこの死神を引き取りに参りました、と眼鏡を掛けたスーツ姿の男、ウィリアムが言う。
そして彼は屋上から飛び下りた。
「ウィル!ウィリアム!!助けに来てくれたの・・・」
ね、の一言は地面に埋もれた。
何故なら飛び下りたウィリアムがグレルの頭を狙って着地したからだった。
「派遣員グレル・サトクリフ
貴方は規定違反を犯しました」
そう言い手にしたファイルをめくり、ウィリアムは容赦無くグレルを蹴り飛ばして行く。
さらに違反内容を告げる間も顔色一つ変えず、最後にはズルズルとグレルの髪を引っ張り本部へ戻ろうとする。
そんな中グレルが文句を言えば、その髪を支点に地面に叩き付ける、そんな有様だった。
そして見るも無残になったグレルを放置し、ウィリアムはセバスチャンと向き合う。
「この度はアレが大変ご迷惑をお掛け致しました
あ、これ私の名刺です」
「はぁ…」
「全く…よりによって貴方のような害獣に頭を下げる事になるとは、死神の面汚しもいい処だ」
名刺を渡しながらボソリと呟いたウィリアムに、セバスチャンは貰ったばかりの名刺をすぐに捨てた。
「ではその害獣に迷惑を掛けない様しっかり見張っておいて下さい
人間は誘惑に弱い
地獄の様な絶望の淵に立たされた時
目の前にそこから脱却できる蜘蛛の糸が現れたら必ず縋ってしまう…
どんな人間でもね」
「それに漬け込んで人間をたぶらかし、寄生して生きているのが悪魔でしょう」
「否定はしませんが」
くいっと眼鏡を上げたウィリアムにセバスチャンはクスリと笑う。
「首輪がついた飼い犬な分、節操の無い狂犬共より幾分かマシな様ですがね
それから…」
ちらりとシエルの方を見やった後、反対側にウィリアムは視線を向ける。
「あっちの猫も随分しぶとい生命力の様で…
トドメをさしたい所ですが、生憎私の仕事外ですから…
最重要リストに載っているくせに命拾いしましたね
…さ、帰りますよ
グレル・サトクリフ」
不自然に盛り上がったコート…つまり***を一瞥し、ウィリアムはグレルを引きずって行く。
ブツブツと文句を言いながら去って行く死神達に、無言でセバスチャンは手にしていた死神の鎌を投げ付けた。
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