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―フーーーッ
一つ息を吐き、セバスチャンが燕尾服の上着を脱ぐ。
「この方法だけは使いたくなかったのですが…仕方ありません」
「ンフッ…ようやくアタシに本気になってくれるのね?」
ガチャッとグレルが死神の鎌を構え直す。
…月明りの下の二人の間を風が吹き抜けた。
「次の一撃で終劇にしましょうか、セバスちゃん
この世にさようならを
あの世で結ばれまショ?
セバスちゃん!」
その言葉を合図に、両手で死神の鎌を構えたグレルと、片手に燕尾服を携えたセバスチャンが走り出した。
―ギャラララ・・・
散々聞き慣れたBGMが止まった。
「!!?……え?」
回転が止まった死神の鎌にグレルは焦る。
取りあえず刃に絡んだソレを引っ張って見るが、取れないし死神の鎌は何も言わない。
「エエエエエエー―――ッ!!」
「その武器が回転する事であの切れ味を生み出しているのでしたら、その回転を止めてしまえば良いかと思いまして」
「こんなモノすぐに取って…!」
必死に絡んだソレを取ろうとするグレルに、セバスチャンが追い討ちをかける。
「その燕尾服は上質なウールで出来ています
ウールは布の中でも特に摩擦力が強い
一度かんだら中々取れませんよ」
死神の鎌に絡んだソレは燕尾服―
どんだけぇぇ!と驚くグレルにセバスチャンは、はーぁ。と溜め息を付いた。
「お屋敷からの支給品ですし、どうしても燕尾服だけは使いたくなかったのですが…
仕方ありません」
すでにボロボロでしたしねぇ。
そう言ったセバスチャンの口角が僅かに上がる。
そしてゆっくりと歩き出した。
「すべてが切れる死神の鎌、使えれば…ね
さぁ…グレルさん、死神の鎌はもう使えませんよ?」
その場にしゃがみ込んだグレルの側でセバスチャンは足を止める。
「ただの殴り合いでしたら、少々自信がございます」
「あっ…ちっ…ちょっと待って…かっ…」
指を鳴らし笑顔のセバスチャンに対し、グレルは顔面蒼白。
目尻には涙も浮かんでいた。そして…
顔はやめてぇぇぇー――
ぎぃやーーー
そんななんとも情けない声が響き渡った。
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