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―ガッ
鈍い音が響く。
「…ッ」
頭突きと言う予想外の攻撃手段を、セバスチャンがまともに食らってしまったのだ。
「情熱的なキッスでお別れヨ、セバスちゃん」
踏み付けられていた手が自由になったグレルが死神の鎌を振り上げる。
「それでは、幾千にも幾万にも
ごきげんよう」
勝者の笑みを浮かべたグレルが死神の鎌を振り下ろす。
それはセバスチャンを斬り、彼の走馬灯劇場を再生する。
………はずだった。
《ほっほっほ》
いきなりのタナカのドアップに、一瞬グレルの動きが止まる。
しかしその後も現れるのは、ほとんどドジな使用人達ばかり。
「ちょっ…ちょっちょっ…ちょっと!
なんなのヨ、コイツらあああっ!」
「ここ1年程はそればかりの毎日でしたからねぇ…」
ドラマ性のかけらもないっ!と騒ぐグレルに、斬られた傷口を押さえながらセバスチャンは一応答える。
「こんな凡人共に興味は無いのよ!
もっとオイシイトコ見せなさいよッ!」
「残念ですが」
一瞬でグレルの背後に周ったセバスチャンが人差し指を口に添える。
「ここから先は有料です」
「チッ!」
繰り出された蹴りを避けたグレルが、セバスチャンとの距離を取る。
「嗚呼…また服がボロボロになってしまった…
肩くらいなら繕えばまだ着られると思っていたんですが…
コレはもうダメですねぇ」
「こんな時に服の心配なんて余裕じゃない
傷が浅かったってコトかしら
でも身だしなみに気を遣う男って好きよ
セバスちゃん!」
服の心配をするセバスチャンにグレルは改めて死神の鎌を向け、そして構えた。
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