(11/13)
「銃とナイフとは言え…
流石に***相手じゃ銃も不利だね」
お前は素早いから、当てにくい。
ゲホッと口の端から血を流し、男が無理に笑顔を浮かべる。
その脇腹にはナイフが刺さり、少し離れた所に銃は転がっていた。
***を狙った銃弾は床に食い込み、煙を上げている。
「やはり、よそ見は良くないね
こうやって怪我をしてしまう…」
『…?』
天井を見つめながら男は***に語る訳でもなく、独り言のように喋る。
「全くダメだな、私は…
力や権力を求めるあまり、先走り過ぎた。番犬を呼び出したいが為に、お前を使ったが…
お前を"***"として全く見てやらなかったから、こんな結果になったのだろうね
お前を…ちゃんと私の娘として見ていたら…実験の為の道具として扱わなければ・・・
私がもう少し力や権力に貪欲でなければ…変わっていたかもしれない」
『何を…今更言うの?』
それは敗者の言い訳にしか聞こえないと言うのに…
「そうだ、最後の名前と…その意味を教えていなかったね
まさか、こんなに早くに教えるとは思わなかったよ」
痛みに顔を引きつらせながら、男は銃が入っていた箱から紙切れを取り出し、***に差し出す。
「名前と言うよりは、鍵かもしれないね」
『…gladiolus?』
「意味は"忘却"
その言葉1つで、この世界を生きてきたお前は…皆の記憶から消える
この世界の人間は皆、お前の力を欲しがっているからね…」
―私を殺して、自由になっても、追われる日々は意味がないだろう?
『追われる…?』
「すまないね。実は研究所の誰かがお前の情報を洩らしたらしいんだ
容姿も、名前も、コードネームも…紙切れ数枚だが、情報は豊富だ
お前はコードネームさえ呼ばれたら、その人に従うようになっているからね…
まぁ、その為の鍵なんだよ
…いけない、そろそろ時間のようだ」
『時間?』
***が聞き返すと同時に、どこかで爆発音がした。
<< >>
《目次へ》