no title | ナノ


(8/13)

『うっ、ぁ…わたっ、私っ…!』
「…思い出せた?」
『ごめっ…ごめん、なさいっ!』
「謝っても戻らないわ…それに、こうなったのは私のせい」

泣きじゃくり耳を貸そうとしない***をギュッと抱き締め、彼女は一人語り始める。



私ね、知ってたの。あの人が一体何をしていたのか。

あの人は…力を求めたのよ、この国を、世界を支配する力を。

いつも人を超える人を作りたがっていたわ…。そうすれば、番犬も怖くないって。

だからって…何も動物の力を借りる事は無いわよね。貴女の前に何人もの子供が犠牲になったわ。

中には鳥の力を付けようとして、体から羽が生えた子が出来た。…もちろん殺された。

貴女は…猫なのよね。だから…名前に仔猫…キティなんて付けられて…

ずっと側にいたのに、止めてあげられなくて、ごめんなさい。

ねぇこんな私に罰をくれないかしら?


『罰?』

聞き返す***に、彼女は無言で肯定を示す。

「お願い、私を殺してちょうだい」
『!そんな…無理だよ…』
「何言ってるの。貴女の仕事は"この屋敷内を全滅させる事"違う?」
『えっ、なんで知って…』
「…内緒
 それに私を殺さなきゃ、貴女の仕事は失敗する
 あの人は優しそうに見えて、狂ってるから…仕事でミスなんて



 貴女が殺されるわよ?」
『!!』

それでも良いの?
聞いて来る彼女に***は何も返せない。

「どうする?私を殺すか、自分が殺されるか」
『…ないよ』
「何?」
『出来ないよ!お姉さんも殺せないし!だからって…死にたくない!
 いっぱいお仕事で殺して来たけど…でもっ、でもっ!』
「自分が死ぬのは怖い?」
『っ!』

言葉に詰まった***に何故か彼女は笑顔を浮かべた。

「良かった
 …貴女を殺さなくて済む」
『え?』
「もしも貴女が死にたいなんて言うなら、私は貴女を殺すつもりだったのよ?
 はい、コレ」

チャキッと***の手に小型のナイフが握られる。
そして彼女は***と僅かに距離を取った。

「貴女はこの仕事を絶対成功させて、あの場所に帰るの
 それからどうしたいかは…貴女が決めるのよ」

妙に引っ掛かる言い方。
その事に***が気付くより少し早く、彼女はゆっくりと口を開いた。





「さぁ、お仕事よ。Killer-Kitty



 …私を殺しなさい」








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