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『なんか、変』
じっと鏡の中に映る自分とにらめっこする。
睨むような、疑うような、そんな黄色い瞳に見つめ返された。
『お姉さん…いなくなっちゃったし…
最近…よく記憶が無くなるし…』
"最後のお手伝い"が終わった2日後。今まで世話をしてくれたメイドが屋敷を去った。
父親曰く「暇を与えてやった」らしい。
それと同時に***の部屋は急ごしらえだったあの場から、窓の有るちゃんとした部屋に移った。
洋服も白い検査服とは違う、年相応の可愛らしい服ばかり。
そして"お仕事"を始めてから記憶がよく無くなっていた。
と言うより"お仕事"に関する記憶が全く頭に残っていない。
その事を訴えても、父親は笑って誤魔化すだけだった。
『なんなのかなぁ…』
鏡から目を離し、天井を眺めると控え目なノック音が部屋に響く。
『はぁい』
「私だ。私のお客様がお前に会いたいらしい」
服装は構わないから、来てくれないか?
そう言われ、***は体を起こしドアへと向かった。
「へぇ、これが」
「また随分幼い…」
「甘く見ては困ります。これでもすでに3つ」
「まさか…最近のは!」
「えぇ、私めが」
男の横に座った***を物珍しげに客人たちが眺める。
少し居心地悪いと感じるが、"男の娘"である以上無礼は許されない。
仕方なく会話に耳を傾けるが、何の事か全く分からなかった。
「***」
『あっ…はい』
「いいかい?お前さえいれば…
この国は、世界は私の物になるんだよ」
『え?』
目の前の人物が何を言っているのか、分からない。
視界の端に映る客人達が何故、笑顔を浮かべているのかも分からない。
だけど男は、そんな***を無視して言葉を続ける。
「女王も、その番犬も敵では無いんだよ」
『番…犬?』
「あぁ。番犬さえいなくなれば、後は早い」
「しかし…まずは同士でありながら、異分子を断つのが先では」
「だから今、この子が暗躍しているのだろう?」
「成程」
***から目を離し再び男は客人に向かい合い、そのまま何やら話し込み始める。
放置された***は最初こそ、分からないなりに話を聞いていが、次第に眠気に襲われ眠りについた。
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