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『にちよーびっ!』
「嬉しいのは分かりますが、ジッとして下さい」
お着替えが出来ませんよ。
苦笑するメイドに***は慌てて、はしゃぐのを止める。
大人しくなった***を手際よく着替えさせながら、ふとメイドが呟いた。
「今日は可愛いお洋服が着れますね。いつもは白い…お洋服ばかりですから」
『白いの***は、イヤじゃないよ?うごきやすいもん』
チラリと視界の隅に白い服が映る。ワンピースと言えば聞こえは良いが、実際は検査服そのものだった。
―コンコン
―私だが用意は出来たかい?
『お父さんだ!行ってもいい?』
「えぇ背中のリボンも結べましたから、良いですよ」
着替えの片付けをするメイドにお礼を言って、***はドアに向かって走り出した。
急ごしらえの部屋から一転、今度は豪華そのものの部屋に変わる。
きっと"お父さん"の部屋なのだろう。彼は部屋のソファにゆったりと腰掛ける。
時折彼がこっちを見て微笑むのは、視線が合ったからだろう。
「おいで、***」
『はぁい』
名前を呼ばれ、***は彼の元に駆けて行く。
大きな手に抱っこされ、***は彼の膝元にチョコンと乗せられた。
「まずはお手伝いご苦労様」
『くすぐったいっ』
頭を撫でられ、***は体を捩る。
それでも男は撫でる手を休めず、一人勝手に喋り始めた。
「いいかい、***。良く聞くんだ
君には3つ名前がある、一つは***、皆が呼ぶ名前だ
それから仕事の時の名前。これは***が仕事をする合図だ」
『おしごと?』
「あぁ、そうだ
***のお手伝いが全部終わって…成功したら、今度***はお仕事をするんだよ」
『…よく、わかんない』
拗ねた口調の***に男は、また判らなくて良いと流してしまう。
「そして最後は特別な名前だ。私が死んだら使える、そう仕組まれているはずだ
名前と意味はいつか教えてあげるよ」
『お父さん、死んじゃうの!?』
「もしもの時だよ。それでも私は***より長く生きているからね
何もしなくても、死ぬのは私が先さ」
『…』
「こらこら、そんな泣きそうな顔をしないでおくれ
せっかく久し振りに相手が出来ると言うのに…」
困った顔で男は***を抱き寄せた。
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