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質素と言うには豪華すぎるが、豪華と言うには質素すぎる。
家具もあるが、調度品のバランスから"とりあえず用意した"感じが否めない。
早い話、ココは急ごしらえされた部屋。
さらに言うなら窓が見当たらないので、地下室の一部なのだろう。
そんな部屋の住人が誰なのかは、ベッドに投げられた小さな服が答えだ。
『はやく、にちようびにならないかな?』
「あら、どうしてですか?」
つたない英語で喋る***に一人のメイドが問い掛ける。
その手は***の着替えの為に休める事はない。
『にちようびは、おてつだいがなくて、お父さんとあえるからっ』
「まぁ、そうでしたわね」
***の着替えを終わらせ、メイドがニッコリ微笑む。
対して***は少し不服そうな声を上げた。
『ねぇ。***、おきがえ、じぶんでできるよ』
「駄目ですよ。これは私の仕事です
あ、今日のお手伝いが終わったら、また絵本を読みましょうね」
『わっ、ほんと!?』
「えぇ。さぁ行ってらっしゃいませ」
***の興味は上手く逸らされ、***は"お手伝い"に向かう。
扉をすぐに開ければ、白衣を着た人間が動き回り、戸棚にはガラス器具や、よく分からない機材が乱雑に置かれている部屋が現れた。
お手伝い、は研究所でするらしい。
『おはようございますっ!』
パタンと扉を閉め、***が挨拶すれば、その場の皆が笑顔で挨拶を返す。
『きょうは、何するの?』
「うーん、この間と同じで走るんだけど…良いかい?」
ファイルを確認しながら研究員は困ったような顔を見せた。
『おてつだいだから、***、がんばるよ』
「そうか、ありがとう。***は良い子だね」
明るく答えた***に研究員は笑顔を見せ、***の手を引いていく。
その様子を周りの研究員たちも見守るように、だけど何処か悲しそうな笑顔で見つめていた。
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