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『場所最悪っ…!』
ただでさえ家屋の屋上で狭いのに、足場はガタガタ、雨で視界が悪い。
更に付け加えるなら身を隠せる場所は無い。つまり互いの動きが丸判り。
誰が見てもわかる程、次第に***は不利になっていた。
「最悪?アタシはこの子を振り回せるから最高よ!」
顔を顰めて回避に徹する***とは対照的に、グレルはひたすら攻撃に徹する。
やがてその猛攻を遂に***が回避出来ず、肩口に僅かな傷を負った。
『いっ…!』
「アラ残念。もう少し深かったら見れたのに」
『悪趣味!』
「お仕事よ。それより…」
カツン、カツンとグレルが***との距離を縮め、死神の鎌を目の前に突き付ける。
後ろに逃げようとしても、後1mあるかないかと言う所。
もう、逃げ場がなかった。
「アンタ、スタミナ切れてんじゃないの?」
『―っ!』
「その顔を見ると当たりね
最初に比べたら避けるのもギリギリって感じだし…
何より反撃が無くなったワ」
『適当にその大きいの振り回してるだけだと思ったら…良く見てるじゃない』
傷口をおさえグレルを睨むが、言われた事は間違っていない。
ずっと雨に打たれ続け体力は奪われていたし、そろそろ集中力も危ない。
それに元々***は"短気決戦型"だったから、長期戦は不利以外何もない。
「アタシは***ちゃんと違ってまだ余裕だから♪」
『…悪趣味』
ボソリと呟いた***にグレルは笑顔で死神の鎌を振り上げる。
「違うわよぅ、「お仕事よ、ですか?」
『執事さん?』
「セバスちゃん!」
一体いつ現れたのか、セバスチャンが死神の鎌を持つグレルの手を掴んでいた。
『何で?!』
「"危なくなったら助けろ"
坊ちゃんからの命令です」
『…言ったんですか?』
少し睨むように、恨めしそうな***にセバスチャンは困ったような笑みを浮かべる。
「申し訳ありません。"命令"でしたから」
『あー、それは計算外…』
迂闊だったと力なく***は笑った。
「ネェ、お話はもう済んだかしら?」
『え?』
「***ちゃん言ったわよね?
"あんなに喋られたら、攻撃を食らうまでの時間を計算して逃げる方法考えるわよ"って」
『それが?…まさか!』
ニヤッと笑ったグレルが、セバスチャンを吹っ飛ばしたのは、一瞬の出来事だった。
『執事さ…!』
「セバスちゃんを構う余裕はないでショ?」
駆け出そうとする***の元にグレルが立ちはだかる。
そして……
―ドンッ!!
『え・・・?』
気がついた時、すでに***の片足は屋上から離れていた。
「二人が喋ってる間、確実に仕留める方法考えてたのヨ
バイバイ、***ちゃん♪」
振り上げられた死神の鎌が***を切り付ける。
一瞬の出来事のはずなのに、***には酷くゆっくり感じた。
そして視界一面を赤が支配して…
そのまま落ちて行った。
死神vs・・・ END
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