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「あらヤダ。***チャンってば逃げちゃった
あそこにいてくれたら、後で二人まとめて殺れたのに」
死神の鎌を振り回しながらグレルが至極残念そうに、走り出した***を視線で追いかける。
「戦闘中に余所見とは…随分余裕ですね」
かく言うセバスチャンも襲って来る死神の鎌を避けながら、時折視線は***を追いかけていた。
「嫌ァね、***チャンの事もアタシのお仕事なのヨ
セバスちゃんも見たいんジャない?***チャンの走馬灯劇場を」
―セバスちゃんのも、結構ドラマティックな痛みだったデショ?
口許に笑みを浮かべながら、グレルはセバスチャンの破れた左袖に目を向けた。
―走馬灯劇場
(シネマティックレコード)
―それは死神の能力の一つ
―死神が死亡者予定者リストに載った人の記憶を再生し
―2択しかない審査に使う
―生かすべきか、殺すべきか
―後者に選ばれると、その人は
―死神の鎌で記憶も魂も体から切り離されて…
―全て終わる
「興味がありませんね」
短く言い捨てるセバスチャンにグレルが笑う。
「嘘。本当は気になってるクセに。全く妬けちゃうワ、でもねっ!
いい男の過去も気になるのよ!悪そうな男なら尚更ねっ!」
「!!」
グレルの攻撃に気付き、セバスチャンは避けるが少し遅く。
背後からの攻撃をギリギリ両手で受け止めるのが精一杯だった。
「…ンフフッ
人間相手のごっこ遊びじゃ済まないわよセバスちゃん
死神の鎌にかかれば、記憶も、魂も、空間も
悪魔だって本当に切れちゃうんだから!」
力は拮抗しているようで、僅かにグレルが上を行く。
その証拠に死神の鎌は家屋の壁を抉り、セバスチャンの肩も掠めて行った。
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