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父親似の赤毛が大嫌いだった
赤い色が大嫌いだった
貴方が誉めてくれてから
赤い色が大好きになった
だけど だけど
「さて」
セバスチャンは羽織っていたコートを脱いで、それを徐に二人に被せる。
「!?なにっ…」
『うわっ?!』
「二人とも、あまりお体を冷やされませんように
街屋敷に戻ったら、ホットミルクでもお淹れ致しましょう
蜂蜜かブランデーで甘みをつけたものを」
笑みを浮かべ、被せたコートを直しながらセバスチャンが言う。
その言葉にシエルはコートを握り締め、***は小さく頷いた。
「アーーラ、そんな簡単に帰してあげないわヨ
死神の鎌もアタシも最近手ごたえない獲物ばっかりで欲求不満気味なの…
よッ」
死神の鎌を構え、高く飛び上がったグレルが3人のいる場所に襲いかかる。
ギリギリの所で3人が避けたが、元いた場所は派手に抉られていた。
「アタシは追われるより追う方が好きヨ、セバスちゃん!
素敵な鬼ごっこしましょ!!」
『シエル』
少し離れた所で始まった戦いから、視線を逸らさず***が呟く。
「何だ?」
『私も…行って来る』
「なんだと!?」
『多分・・・私がシエルといると、そのうちシエルが危なくなるもん』
「あっちは死神と悪魔だぞ!?***は人なんだ、違いすぎる!」
正気か!と問い詰めるシエルの肩を掴み、***は真っ直ぐシエルを見つめる。
『でもね。
私は"普通の"人じゃないんだよ』
一瞬悲しそうな笑みを浮かべた***に、シエルは何も言い返せない。
その隙に***は、コートの外に飛び出して行った。
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