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降り出した雨は全く止む気配を見せない・・・。
「曲がりなりにも"神"である貴方が何故執事など?」
「堅い事は言いっこナシよ、そうね…
一人の女に惚れ込んじゃったってトコかしら」
「その女とは…」
「聞かなくてもわかってるんでしょう」
セバスチャンの言葉を遮る声、コッと誰かの靴音がした。
「セバスチャン」
「…マダム…」
少し落ち着いたシエルが声の主の名前を呼ぶ。
「計算違いだったわ、まさかグレルの正体を見破れるヤツが、シエルの傍にもいたなんてね」
「……。最初の容疑者リストにはもちろん貴女もいた
けれど、貴女のアリバイは完璧だった」
「酷いわねシエル
身内である私まで疑ってたの?」
腕を組んだまま、マダムが困ったように笑う。
「犯人になりえるのなら、血縁であろうが知り合いであろうが関係ない
全ての殺人に関わるには、容疑者リストにいた、どの人間にも無理だった
もちろん貴女にも」
シエルの言葉を聞きながら、***は屋敷で聞いた説明を思い出す。
『(そっか…死神が共犯なら話は別だよね
私達に気付かれないでメアリの部屋に入れるんだから、離れてる子爵邸から殺
人現場まで一瞬で移動出来るよね
それにパーティー?で従者が、ちょっとの間いなくなっても誰も気にしない…
だから切り裂きジャックでありえるのは…)』
「マダム・レッド
そして
グレル・サトクリフ!」
「切り裂きジャック事件の被害者には「娼婦である事」「子宮が無い事」以外にも共通点があった
全員がマダムが勤めるロンドン中央病院で"ある手術"を受けている」
一度言葉を区切り、シエルはポケットから1枚の紙を取り出した。
「その手術が施された患者を、日付順にならべたものが、これだ
被害者の殺された順番と、手術を受けた順番がきっちりと重なっている
このリストに名前が上がっていて「残っていた」のはその長屋に住むメアリ・ケリーだけ
張っていれば貴女達が現れると思っていた」
フッと視線を動かしシエルは呟く。
「救えは…しなかったが…」
「残念ねシエル
私の可愛い甥っ子…
私の…姉さんの子…
気付かなければまた一緒にチェスが打てたのに」
「……」
「だけど…」
グッと握り締めたマダムの手に力が込められる。
「今度は譲らないわ!!」
「!!」
マダムの叫びを合図に何かがシエルの元に襲いかかった。
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