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―ギャアアアアア
『「!!」』
「なっ!?誰も部屋にはっ…」
「行きましょう!」
慌てて走り出す3人。
そしてシエルが勢いまかせにドアを開いたその瞬間。
その頬に生暖かい、何かが飛んで来た。
「いけません!」
慌ててセバスチャンがシエルの視界を覆うが一足遅く。
生々しさを視覚と嗅覚に訴えられ、シエルはその場で嘔吐した。
『…見ちゃったんだ』
飛び散る臓物や血痕を無表情で見つめながら***が呟く。
―不謹慎だけど、懐かしいなんて思ってしまった
そんな事が頭を過ぎる中、段々と近付いて来る影を***は黙って睨み付けた。
「随分と派手に散らかしましたね」
『…汚すぎる』
ゆっくりと近付いて来る影にセバスチャンと***が言葉を投げる。
影が血溜まりを踏み付け、ビシャッと嫌な音が響く。
「"切り裂きジャック"――いや」
『「グレル・サトクリフ」』
「ち…違います、コレは…
叫び声に駆け付けた時にはもうっ…」
『もう…何?』
「私たちは唯一の通り道にずっといたのですが
貴方は一体何処から袋小路の部屋へ入られたのです?
…そのお姿でしらばっくれるおつもりですか?」
血まみれの姿で現れたグレルは何も言わず、その場から動きもしない。
『もういいんじゃない?グレル…さん
ううん、「グレル・サトクリフ」も仮の姿でしょう?』
「くだらないお芝居はやめにしましょうよ「グレル」さん
"貴方の様な方"に人間界でお会いするのは初めてです
お上手にそれらしく振舞われていたじゃありませんか」
セバスチャンの言葉に何かボソボソ呟いたグレルが漸く顔を上げる。
「ンフッ
そ――――お?」
狂気に満ちた目でグレルが笑う。
「そうよ、アタシ女優なの、それもとびきり一流よ」
降りしきる雨の中、グレルの徐々に本当の姿が露になって行く。
「だけどアナタだって「セバスチャン」じゃないでしょう?」
「坊ちゃんに頂いた名前ですから、「セバスチャン」ですよ…今はね」
「あら忠犬キャラなのね、色男はそれもステキだけど
それじゃ改めましてセバスチャン…いえセバスちゃん
バーネット邸執事、グレル・サトクリフでございマス★
執事同士、どうぞヨロシク。後そこの***チャンも」
「んばっ」と投げキッスをされ、セバスチャンは鳥肌を立て、***は思わず顔を反らした。
「ああ〜やっと本当の姿で会えた!スッピンで色男と若い女の子の前にいるの、
恥ずかしかったのヨ?ンフッ♪
悪魔が執事してるなんて初めて見たから、最初ビックリしちゃったワ」
「それは…貴方も同じでしょう?
私も結構生きていますが"貴方の様な方"が「執事」をしているなんて聞いた事がありませんから
神と人との中立立場であるはずの存在…
死神!」
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